ドライバーズカーの理想像

BMW M5は、強い二面性を持ったクルマだといえる。バランスの取れた穏やかさを持ちつつも、後輪駆動ベースの姿勢を崩した激しい走りも楽しむことができる。次世代の、コーナーのエイペックスを縫うように走る精密機械なのだ。

そして、穏やかな日常と激しい非日常とを、すぐに切り替えることもできる。BMWは、ステアリングの重さやダンパーの硬さ、変速スピード、前後のトルク配分など、ドライバーが好む組み合わせの設定を2種類保存できる機能を付けてくれた。その設定は、ステアリングホイールのスポークに付いた「M1」と「M2」のボタンを押すだけで、瞬時に切り替えることができる。

設定の組み合わせが複雑に感じられたドライビングモードのプログラムは、この巧みな作り込みのおかげで、BMW Mディビジョンの技術者が目指した通りの、最高の体験へと結実する。

AMGのような強烈なエグゾーストノートは備えていなくても、極めて多面的で奥行きの深い仕上がりを得ており、スーパーサルーンの次なる領域を切り開いたといっても過言ではない。

後輪駆動のスポーツカーのような俊敏で柔軟なハンドリング。アウディRSのような優れたスタビリティと安全性。ポルシェ911ターボを上回る0-100km/h加速。優れた快適性と高級感を後席で味わいながら過ごす、高速道路での長距離移動。

BMW M5なら、そのすべてを叶えることができる。

歴代のモデルから大幅な進化を遂げ、ドライバーズカーの理想像として、新基準を打ち立ててしまった。

間違いなく、今回の勝者はM5だ。

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