最も高価な430スクーデリア

第1日目 PM2:30/カレー港

カレー港に到着すると、わたしはフェラーリに乗り込み、少々気が引けながらもV8サウンドを威勢よく響かせ、おずおずとノーズをランプウェイに向けた。

アイドリングでさえ、430スクーデリアのエグゾーストノートは頭が麻痺しそうなほど騒々しい。がらんとした車輌積載デッキのような限られた空間では、なおさらそう聞こえる。

スーパーカー・トリオはフェリーの乗組員と乗客たちのあいだでもちょっとした話題となった。

430スクーデリアはスロットルペダルにわずかに力を込めただけでも排気音は倍くらいになって、小さな子どもなら泣き出してしまうほどだ。こいつは控えめなタイプのひとには向かない。自己主張が強いアクティブな人間のためのクルマだ。

それも、銀行口座に少なくとも3000万円のお金があまっているひとに限る。

もっとも、日本仕様には英国ではオプションのボディストライプ（邦貨換算約93万円）やアルカンターラ内装（同49万円）などが標準装備されているため、こちらで購入するよりはるかに安い。

そのほかにもいくつかのオプションを追加した今回のテスト車などは、英国では総額でおよそ3900万円にもなるのだ。対するGT2は2642万円で、ガヤルドはeギア仕様でも2533万1250円なのだから、英国仕様の430スクーデリアと比べたらバーゲンである。

では、ほかの2台より1300万〜1400万円も余分に支払って、430スクーデリアでなにが得られるのだろう？　スペックのうえでは、どこにそのエクストラ分が費やされているのかはうかがい知れない。

4.3ℓV8エンジンは510psの最高出力と48.0kg-mの最大トルクを発生するが、ガヤルドのV10は560psと55.1kg-mだ。そしてGT2のツインターボ・フラットシックスにいたっては、出力は530psながら69.3kg-mという段違いのトルクを2200rpmという低回転で発生する。

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