SUV対決 BMW X6 vs レンジローバー・スポーツ 回顧録

公開 : 2018.04.29 08:10  更新 : 2018.04.29 10:51

X6というクルマは誰が見ても必要不可欠ではありませんが、多くの人が欲しがります。その新進気鋭のX6が伝統のレンジ・ローバー・スポーツと対決します。X6は直6、レンジはV8の共にディーゼルターボですが、排気量とは逆に動力性能ではX6が上回っています。

AUTOCAR JAPAN誌 64号

もくじ

「異常」なX6
X6とは何者か
重量級と思えぬ身のこなし
安楽なレンジローバー
論理性にこだわらない」
BMWの勝利

「異常」なX6

まず最初に白状しておこう。わたしは予想というものがからっきし苦手だ。どのくらい苦手かというと、実は1994年にわたしは、本誌上で大真面目に「マクラーレンF1よりも速いクルマを造るヤツは今後永遠に現れないだろう」と宣言してしまったのである。

ご存知のとおり、現時点における最速の市販車はブガッティ・ヴェイロンだ。そして今回、またもやわたしは、以前にも増して間抜けな大失敗を犯してしまうかもしれない。

しかし、それを承知で予想させてもらおう。これからわずか10年、遠くても20年も経たないうちに、当時(つまり現在だ)の世界がどれだけ異常であったかの証拠として、ひとびとはBMW X6を挙げることになるだろう。

BMWが造った見るからに巨大で法外な値段の、2tも重量があるのにひとを乗せるシートは4つしかなく、しかもそのうちのふたりは満足に手足を伸ばせないクルマを、ひとびとは真っ先に思い浮かべるのだ。流麗なクーペなどという評価は皆無で、むしろBMWが今までに造ったなかでも最高に不恰好な代物だと認知されているはずだ。

当時、何千人ものひとたちが、本当に自分の自由意志でこのクルマを買いにディーラーに走ったなんて、彼らには信じがたい史実に違いない。

もちろんこの大胆予想は、このクルマの存在そのものと、それが内に秘めている忌まわしいほど素晴らしい能力に対する皮肉である。しかしながら、いかにX6のコンセプトが気に入らなく、そしてわたしの予想に賛同してくれる読者が多くいたとしても、今年の製造分はすでにすべて売り切れているのが現実だ。それどころか、ウェイティング・リストはさらに伸び続けているのである。

X6のクルマとしての立ち位置を考えてみると、それは欠陥と愚行のあいだのどこかにあるとしか思えない。しかし、実際にX6のようなクルマを造ってしまった(そして売ってしまった)のが経営上の英断だったのは、紛れもない事実だ。

要するに、X6はひと言ではなんとも評価しづらいクルマなのだ。そこで、レンジローバー・スポーツと一緒に公道で乗り比べて、なんとか自分なりの答えを導きだそうと思った次第だ。

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