X6とは何者か

まず最初に、X6とはナニモノなのかについて考えてみたい。BMWはこの正体不明なものをなんとか定義するためにかなり苦しいジャンルを創り出し、その頭文字を並べた略語を編み出した。

「SAC」がそれで、つまりスポーツ・アクティビティ・クーペの略である。逆にSACを定義しようとしても、いかなるほかの自動車メーカーもまだその意味を完全には咀嚼できておらず、「X6のようなもの」としか言いようがない。

BMWに続いて同様のものを果敢にも売り出そうとは思えないクルマ、とでも解釈しておこうか。付け加えておくと、青と白のプロペラを社章とする由緒正しい会社に向かって、「X6とは狭苦しくて醜悪で、しかも実用性に欠けた、値段の高いX5」などとは間違っても言ってはいけないのである。

X6より直立したスタイルと水平のルーフラインにより、そのデザインにはより伝統的整合性を感じるものの、このX6に現時点でもっともライバルとして近い位置にあるのがレンジローバー・スポーツである。

今回はそのラインナップのうち、3.6ℓV8ディーゼルを選んだ。X6の英国オーナーの9割が選択するであろう3.0ℓツインターボの直6ディーゼルにV8をぶつけるのはいかがなものかと思うだろうが、それは最高出力がほぼ拮抗しており、その下の2.7ℓV6では、動力性能的にイーブンとは言えないからである。そして、これこそがX6の選ばれる理由でもある。

BMWのエンジンは、より小型でシリンダー数が少ないにもかかわらず最高出力は286psを発生し、272psのレンジローバーに勝っている。

さらに、2185kgのX6は重いのは揺るぎない事実だが、2675kgのレンジローバー・スポーツが相手ならそこにツッコミを入れられることはない。

ランドローバーはなんとかトルクで勝っているのが慰めにはなるかもしれないが、それでも馬力荷重比の差は無視できない。

X6の131ps/tに対してレンジローバーは101ps/tで、BMWが7秒たらずでこなす0-100km/h加速を、ランドローバーはのんびり9.0秒以上かけるわけだ。

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