SUV対決 BMW X6 vs レンジローバー・スポーツ 回顧録
公開 : 2018.04.29 08:10 更新 : 2018.04.29 10:51
重量級と思えぬ身のこなし
ただし、これはわたし自身も驚いたことではあるが、運転してみるとレンジローバー・スポーツは鈍重な感じが一切しない。
ひょっとするとポジションが高いからそう感じるのか、それともそもそも速さなど期待していなかったからなのかもしれないが、BMWと同じZF製の6段ギアボックスを使っているこのレンジ・スポーツは、この種のクルマとしては十分だと誰もが感じるだけの動力性能を備えているのである。
しかし、BMWとレンジローバーのエンジンの差は、いかなる客観的基準をもってしても埋めようがない。これに燃費効率とCO2排出量を考え合わせたら、まさに雲泥の差だ。
ただしX6のエンジンは個性に欠ける印象があり、しかもトルク特性が少々ピーキーである。それからすると、もっと軽量で敏捷なロードカーへの搭載を意図したエンジンだと考えるのが自然だろう。
それとは対照的に、ランドローバーのV8は最初から重量級のフルサイズ4WDにパワーを供給する目的で、そのために設計されているのが実に明白だ。
もっともそれはコーナーに差し掛かるまでの話だ。ここでX6が見せた身のこなしは、それまで経験したことのないものだった。これだけの車高と重量のあるクルマではありえないと思っていた、純然たる楽しみがそこにはあった。
わたしが試乗したこのX6はオプションのアクティブ・アンチロールバーを装備しており、ロールが十分に抑えられていた。
さらに20インチのホイールを履き、リアには315/35というファットなタイヤが組み合わされている。これだけの装備でX6が手に入れたのは、わたしが今までに乗ったあらゆるオフローダーと呼ばれるものを凌ぐ強力な横方向の粘着力だ。
最近、わたしは1週間ほどポルシェ・カイエンGTSを日常の足にしていたのだが、信じられないことに、このX6はカイエンGTSでも想像すらできない走りをこなしてしまうのである。