安楽なレンジローバー

レンジローバー・スポーツはこういう走りには適しておらず、ひょっとするとそういう素質すらもともとないのかもしれない。

ネルソン提督の戦艦ビクトリー号でパワーボート・レースに出るようなものといえば、レンジローバーが高速の逆バンクカーブでX6についていけない様子がイメージとしてご理解いただけるだろうか。

レンジローバー・スポーツでコーナーに高速で進入しようとすると、狼狽するようなロールが発生する。しかしながら、注意深くガイドしてやれば堂々たる態度でロールしたまま、コーナーを忠実にそれなりの速さで走り抜けていってもくれる。

もちろんX6よりもペースは遅く、さらに走りは重厚だが、ステアリングとブレーキのフィールはこちらのほうが優れていた。

乗り心地もX6よりはるかにいい。平坦で開けた道であればX6のかなり硬めのセッティングでも満足できるだろうが、市街地に入って速度を下げるとそこらじゅうにある舗装の継ぎ目や穴を越えるたびに盛大に突き上げられ、耐えがたい乗り心地に辟易するはずだ。

これとは対照的に、レンジローバー・スポーツはまるでふかふかの枕のように柔らかい。ベースとなった3代目ディスカバリーの美点がそのまま残されていることに満足するはずだ。

わたしは別にX6になにも長所がないというつもりはない。だいたい2tもの重さのクルマにこれだけの運動性能を与え、しかもCO2排出量をここまで抑えて12.0km/ℓ台の燃費を可能にしたエンジンがほかに存在するとは想像さえできない。

ケースネスからサザランドまでの広々とした広野をこの2台を走らせてみてわたしがわかったのは、その「違い」はかなり大きいが、しかしそれは極端な「差」ではないということである。

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