「論理性にこだわらない」

もしドライバー以外のひとがどちらかを選ぶとなれば、文句なく皆ランドローバーのほうだろう。シートポジションは前後とも視界がいいから周囲の景色を楽しめるし、サポート性にやや欠けるもののシート自体の快適性では優っている。

また、レンジローバー・スポーツの後席に座れば、膝まわりには適切な空間があり、そしてヘッドルームも十分だとわかる。これがX6だと、傾斜したルーフラインのために後席のヘッドルームは圧迫され、3シリーズのワゴンにも劣るのではないかと思われるほどだ。そしてレッグルームは見かけこそレンジローバーよりも広く思えるものの、つま先を前席の下に入れるのがはるかにむずかしい。

平均的な体格の大人にとっては「そこそこの居住性」といったレベルで、さらにクルマがバンプに乗り上げたらルーフライニングに頭をぶつけてしまうのは間違いないだろう。

わたしはこれらの問題と、X6を購入するひとがいったいどんな論理的購入動機を持っているのかを、英国BMWでXシリーズの製品マネージャーをしているマーティン・スローンにたずねてみた。返ってきた答えはこうだ。「この種のクルマの顧客はあまり論理性にはこだわらないんです」

誰もこれ以上論理的にX6を正当化することはできないだろう。同じエンジンを搭載している335dツーリングのほうが、ハンドリングも乗り心地も動力性能も燃費も優れている。しかもトランクスペースはほぼ同じで、後席の居住性も優っており、さらに購入価格は200万円も安い。

なのに、それをまったく気にしないというのだから。少なくともBMWにとっての関心事は、X6が売れるクルマだという現実のほうなのである。

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