ポルシェに挑むホットハッチ メガーヌR26R vs ケイマンS 後編 回顧録
公開 : 2018.04.30 12:10
911を時代遅れにしてしまうケイマン
ケイマンSでは、フロントかリアがグリップを失って流れ始めたら、即座にステアリングホイールやシートからそれを感じ取れる。
たいていの場合、最初にブレークするのはフロントのほうで、1速ギアを使っていたり故意に姿勢を乱そうとしたのでもない限り、コーナー脱出時のオーバースピードで発生するのが通常だ。しかし、よほど極端な速度でなければそんな事態は起こらない。
ところで、ポルシェは意図的にケイマンSを限界までチューンしておらず、それはこのクルマに実力をフルに発揮させたら911が時代遅れだと明白になってしまうからだ──というような噂を耳にすることがある。それについては、たぶんなんらかの事情があるのは事実だろう。
確かにポルシェはひと頃、911の製造を終了させようとしていた。けれど、ケイマンの開発コストが現在の911に比べて段違いに安いわけではないとすれば、むしろ彼らはケイマンに、失敗に終わった928の轍を不用意に踏ませないよう用心しているのではないか。わたしはそう考えている。
「動力性能とハンドリングはとりたてて攻め込まなくても楽しめるし、これ以上の性能は不要だろう。むしろ必要なのは、速さよりも手の届きやすい価格設定だ」──ケイマンを運転した人がクルマを降りていうことはみんな同じだ。
とは言っても、もっと安上がりに済ませる方法などあるのだろうか? 単刀直入に言えば、R26Rはその答えになり得るのか?
いうまでもないが、写真撮影のための初試乗でも、その後の本格的なインプレッションでも、そして純然たる運転の楽しみにおいても、ルノーのターゲットは常にポルシェだ。それはたとえ真正面からぶつかるライバルを手駒に持っていなくても変わらない。