完璧なドライビングポジション

8Cとはそういうクルマである。けれど、この対決テストの文脈としては、単に親愛の情を持って眺めているだけでは、すでに評価の高いマセラティ・グランツーリスモSとの比較にはなりえない。ということで、出陣しよう。

アルファには乗り込んだ途端にあっさりと拍子抜けする予感も実はあったのだが、幸いにもそうはならなかった。メーターや小さなスイッチのなかには明らかに人間工学を無視した配置のものもあるし、コンソールの通常ならサイドブレーキがあるはずの位置にはボタンやノブやレバーがぎっしり並んでいるが、全体的な雰囲気としては非日常的な特別な空間を演出できている。

カーボン製のバケットシートはちょっと硬く感じるが、形状は背中に見事にフィットしており、そして思わず口元がゆるんでしまうほど、まさにあつらえたかのようにドライビングポジションはぴたりと決まる（ブレーキペダルが遠すぎるのを別にすればの話だが、今はそれには触れずにおこう）。

操作系の配置は、確実にマセラティのほうがエルゴノミクスに優れている。ただ、いたるところが本革でトリムされているが、決してそのインテリアは、乗り込んだら血中にセロトニンがあふれ出るというような性質のものではない。

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