姉妹車対決 アルファ・ロメオ8C vs マセラティ・グランツーリスモS 回顧録
公開 : 2018.05.04 08:10
動力性能に大差はない
どちらのクルマもV8エンジンの始動はスターターボタンを押して行うが、劇的かつ豪快なエグゾーストサウンドで期待に応えてくれるのは8Cのほうである。マセラティは点火する前に軽く上品な咳払いをするだけで、その後はすぐに静かなアイドリングに収束する。
この違いは、アルファが最初からスポーツモードをオンにしておくようにプログラムされているためだ。マセラティとは流儀が違うのである。
8Cの発進はいかにもそれらしく、追い風を帆いっぱいに受けているかのようでもあり、テールパイプから鳴り響く盛大なサウンドで乗員を楽しませつつ進行していく。
同じことはマセラティでも、ただスポーツボタンを押すだけでできるのだが、インパクトではとても8Cにはかなわない。
速さで言えばどちらも間違いなく速いのだが、決して正気を逸脱したものではない。そして、車重や出力で優る8Cが本気で加速したならマセラティはついていけないだろうが、その差は大したものではない。アルファが公称する0-100km/h加速は4.1秒(マセラティは4.9秒)で、最高速度は290km/h対295km/hとなっており、少なくとも数字のうえでは、予想されるほど動力性能に差はないのである。
乗り比べて8Cのほうがはるかにドラマチックに感じられるとしたら、その理由はむしろあらゆる点でグランツーリスモSよりも走りに落ち着きがないからだろう。
その乗り心地は正直に言ってマセラティとは比べ物にならない荒っぽさで、ステアリングにしても“確実な”という形容からはほど遠い代物だ。アルファだとほんのわずかな路面の荒れでも思いっきりラインを乱されるところを、マセラティは平然と走り抜けていく。