価格差バトル 日産フェアレディZ vs ポルシェ・ケイマン 回顧録
公開 : 2018.05.03 08:10
370Zの合流
いつものようにユーロトンネルの手前で、パスポート・コントロールのために左に曲がって税関に向かうよう誘導される。
クルマ全部をまるで掃除するようにチェックした彼らは、続いてこのクルマに乗っている理由やら行き先やら、山ほどの質問を浴びせてくる。開放されるまでの15分ほどのあいだに、車内にあった一切合切の動かせるものが一度外に出されてからまた元の場所に戻されたが、そのなかにはわたしのものではない撮影道具一式も含まれていた。
いうまでもなくカメラマンのスチュアートの商売道具であり、彼は今回、飛行機でパリに行き、現地で370Zをピックアップしてからわたしと合流する手はずになっていた。
予定していた海の底を抜ける列車には乗り遅れてしまったため、海峡を挟んだ反対側に到着した時点ですでに30分遅れていた。しかも雨が降り始めていたので、どうがんばっても80km/h以上の速度は出せない状況だ。
結局、1時間遅れで約束の集合場所であるパリ郊外のバポームという町に着いたのだが、スチュアートから15分ほど遅れるとの連絡があったので、わたしは撮影の下見に出かけることにした。2台を撮影しながら試乗して、そして評価を下すまでに残されたのは5時間足らずなのだ。
そうこうしているうちに、遠くに自分のほうへ向かって走ってくる370Zが見えた。なにやらずいぶんワイルドな雰囲気だ。銀色に輝くヘッドランプのカバーには、白い斑点状の汚れが光っている。かなりの距離を走ってきたのがそれでわかった。さらに近くに寄ってくると、ルックスがかなりいいのもわかってくる。
わたしのすぐそばに370Zを停めたスチュアートは運転席で満面の笑みを浮かべているようだったが、それよりもわたしの目を引いたのは、リアの巨大なホイールアーチのほうだった。19インチのアロイホイールがきれいに収まったその造形はやけに刺激的で、旧型の350Zとはまったく異なり驚くほど堂々としている。隣に並んだケイマンがやけにこぢんまりと見えてしまうほどだ。