価格差バトル 日産フェアレディZ vs ポルシェ・ケイマン 回顧録
公開 : 2018.05.03 08:10
ルックスで圧倒するZ
ケイマンのルックスは、最上級の好意的表現を用いるならとてもデリケートであり、迫力では370Zに完全に圧倒されている。
どちらをよしとするかは好みの問題だが、わたし自身の印象を述べるなら、ちょっと心に邪悪な意志を感じつつも、より暴力的で一徹な日産のスタイリングのほうにどうしても目が行ってしまった。特に今回の真っ白に輝く個体はとりわけ魅力的に見える。
対するケイマンのほうは、見かけこそ少々印象が薄いのだが、しかし中身はちょっとしたものだ。265psの新型2.9ℓエンジンは当然ながら従来の2.7ℓより大幅に高性能化されており、PDKデュアルクラッチ・トランスミッションは、扱いにくいボタン操作さえ克服できれば、きわめて簡単に素晴らしく速い走りを堪能させてくれる。改良が進んだPASM「アダプティブ」サスペンションも忘れてはならないオプションだ。
と、そのときまでは、冷静にそう考えていた。だが、370Zに乗り込んだ瞬間、ケイマンに関するあれこれは完全に頭から吹っ飛んでしまった。このインテリアは好き嫌いが極端に分かれるタイプのものだが、鮮やかなオレンジ色のシートと径も指針も大振りなメーター類、それにボタンがたくさんついたステアリングは、なにかを期待させるには十分である。
そして、それらの向こうにあるのは幅も長さもたっぷりとしたボンネットであり、まさにZならではの光景だ。
続いてスターターボタンを押して3.7ℓV6エンジンを始動すると、ケイマンで走ってきたここまでの300kmの体験よりも大きなドラマが、最初のコンマ数秒に詰まっていた。
クルマ全体がわずかに身震いすると、古典的なマッスルカーとは違うが間違いなく周囲の注目を集めるだろうサウンドが鳴り響く。そのサウンドとフィールは、1cmも動かしていないうちから強烈に乗り手を酔わせてくれるに十分である。