敏捷で正確なケイマン

走らせてみると、すぐにいくつかの新事実が判明した。

まず第1に、これはケイマンも同様だが、乗り味が旧型よりもはるかにスムーズで、また静粛性もかなり向上している。

第2に、サスペンションは、特にリアで顕著だが、かなりソフトだ。第3に、ステアリングはポルシェより重く、そしてダイレクトな感触に優れている。そして第4に、エンジンは旧型よりも軽く回るようになった。

ただし、それでもケイマンにはとうていおよばない。正直なところ、絶対的にはまだ軽いとはお世辞にも言えないエンジンだ。

そうした個々の違いもさることながら、この2台を決定的に別の乗り物としているのは、クルマ全体で表現される性格だろう。ケイマンは軽くて敏捷で正確な走りが身上であり、その結果として驚くほどリファインされた挙動が実現されている。

対する370Zは大柄で豪快でやかましく、したがってきわめて男っぽいというかマッチョな走りっぷりとなっている。胸を広げて顎を引き、悠然と道を行くそのさまは、まるで自分が主役のショーを演じているがごとくである。

もちろん、それ自体は新しくもなければ悪いことでもない。350Zにしてもそういうクルマだったし、多くのスポーツクーペ・ファンに認められてもいた。重要なのは350Zがそれらすべての要素をもれなく備えていた点であり、だからこそあれだけの成功を収められたのだ。

ルックスが見事で走りもよく、信頼性が高いが決して割高ではなかった。これら全要素を抜かりなく盛り込めなかったがために350Zの市場にちょっかいを出して失敗に終わったメーカーがどれだけ多かったかを考えると、日産の仕事には驚くしかない。

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