価格差バトル 日産フェアレディZ vs ポルシェ・ケイマン 回顧録

公開 : 2018.05.03 08:10

9割程度までの走りは上々

370Zが350Zと違うのはそうした要素の実現手法であって、うれしいことに基本的な性格そのものはまったく変わっていなかった。

確かにパワーとトルクは旧型の313psと36.5kg-mから336psと37.2kg-mへと強化され、そのぶんだけ速さを感じさせるようになったし、にもかかわらずスムーズになってもいるのだが、全体像はやはり紛れもなく日産の「Z」なのだ。

少なくともコーナーをいくつか旋回するくらいなら、このクルマの新たな一面だけが際立って見えてくるだろう。7割くらいで走らせていると、370Zは本当に甘美な反応を返してくる。

ソフトになった足まわりは多少のロールを許すが、路面からの入力であれドライバーからの負荷であれ、なんの苦労もなく後輪が受け止めてそのまま走り抜けてしまう。

この時点では誰でも本当に従順かつ快適な走りを楽しめるだろうし、もっとペースを上げてもほとんど乱れを見せることはなかろうという感触も得られているはずだ。

実際にペースを上げても挙動はきれいに比例形を保ち続けるので、9割までは比較的簡単に到達できるだろうし、さらに限界近くまで攻めてみたい欲求に駆られるかもしれない。そして、いわゆる本物の高速コーナーに限界速度で突入しない限り、370Zが乗り手を恐怖に陥れることはまったくない。

うかつにもそうしてしまった場合は、恐怖のあまり失神しないよう祈るばかりだ。ましてやステアリング上のボタンひと押しで簡単に操作できるESPを解除してしまっていたなら、本当にとんでもない事態になりかねない。

「本物のシリアスなスポーツカーとしてはソフトすぎるのか?」──もし本気でシリアスな走りをしたいのであれば、その答えはイエスである。特にテールを振り回したいと考えているのであれば、間違いなくそうだろう。

ケイマンに乗り換えれば、370Zのアンダーステアが高速でどれだけ強く、シビアにラインを追い込むには正確さに欠けているかがよくわかる。ケイマンならグリップして走り抜けられるところでも、Zはロールして前輪がスライドアウトしてしまうのだ。

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