有無を言わせぬポルシェの実力

サウンドもフィールも370Zほどドラマティックではないケイマンだが、80km/hを超えた速度域では確実に速い。そのうえ、地表に思い通りの軌跡を残す能力にかけても、370Zをどれだけ勇敢にドライブしてもまったくかなわない実力を備えていることは、乗れば誰にでもわかる。

しかし、純粋に走行性能の優劣によってこの2台を区別するという行為は、現実の話としてはすでに常軌を逸した領域に入っている。いわんや社会的常識から外れた領域の話なのはいうまでもない。

370Zは普通のクルマに比べたらはるかに走行性能に優れ、造りも見事なマシーンである。ただケイマンが、それをさらに上回る、ほとんど常識外れの性能を備えているだけなのだ。

4時間かけて試乗と撮影を行い、それからさらに撮影を重ね、今回の取材もようやく終わりに近づいてきたところで、わたしはやっと370Zの新しい7段パドル式オートマティックの素晴らしさに気がついた。オートモードでもマニュアルモードでも動作や操作があまりに自然だったので、この新機能をけろりと忘れていたのだ。

フルスロットルでのシフトアップも滑るようにスムーズで、シフトダウンのときには短く正確なブリッピングが入るこのトランスミッションは、機械的にはまったく違うGT-Rのものと本当によく似ている。

GT-Rのデュアルクラッチ式ほど先進的ではない普通のトルコン付きATだが、少なくともケイマンのPDKと同じくらい、実用上の性能は優れている。しかもこちらはボタンではなく、まっとうなシフトパドルだ。370Zの購入を検討しているのであれば、このトランスミッションは絶対にお薦めである。

すべての画像をみる　全14枚