中古アストン マーティン 3台乗り比べ 「手の届く上流階級」前編
公開 : 2018.04.28 14:15 更新 : 2018.04.28 14:35
テールライトは…マツダ
仔細に観察すれば、コストダウンの跡は各所に見出せる。なにぶん、開発コストはフォードの基準で見れば極めて少ないものだったからだ。ドアハンドルやイグニッションキーには、場違いな印象を拭えない。ところがもっと目を引くテールライトは、流用元のマツダ・ファミリア・アスティナよりも見栄えが良いほどだ。
キャビンもまた、エクステリアと同様のことが言える。細々としたパーツの数々が、フォードグループの様々なクルマから借用されているのだが、おそらくグラナダのエアベントがどのようなものだったかなど記憶から消え去っているだろう。そもそも、1990年代半ばの英国車らしい豪華さを醸し出す柔らかなレザーや艶やかなウッドに、目は奪われてしまうはずだ。居心地はよく、伝統的な魅力さえ感じられる。
6気筒に火が入っても、洗練された穏やかさは失われない。実に静かで、過剰な演出や馬鹿げた騒々しさとは無縁だ。取材車はオプションの4段AT搭載車で、サイドシルから生えるサイドブレーキをリリースすれば、インテリアに見とれているうちにDB7は動き始める。これが純粋なアストンであろうがなかろうが、今までに乗ってきた記憶の中のアストンと同じフィーリングがここにはある。控えめながら狙いがはっきりしており、このうえなく快適で、丁重に居心地よく仕立てられている。
正直に言えば、ごく初期のアストンは泥臭いところがある。それとは対照的に、このDB7はパワーステアリングさえ備わるが、それが楽しく、天恵のような精確さと完璧な手応えを持つ。さらに至上の乗り心地で、真のGTの文法に則り注意深く作り上げられたことが感じられる。まさにワンダフル、そして、スーパーチャージャーの叫びはファビュラス。当時、AUTOCAR誌のロードテストでは困惑を呼ぶ結果だったにも関わらず、名声を得たのも納得だ。