中古アストン マーティン 買うならどのモデル? 「手の届く上流階級」後編
公開 : 2018.04.28 20:10
V12でこの世の果てまで
このクルマの48バルブV12が初めて世に出たのは1996年、フォードのコンセプトカーであるインディゴのパワーソースとしてだった。その3年後、DB7ヴァンテージに量産ユニット賭して搭載された。これは直6に代わるものだが、その驚くべき出来栄えを体験すれば、この換装には文句なしに納得できる。この “AM04” こと5935ccユニットは、フォード・デュラテックV6を2基つなげたものといえるが、マラネッロやサンタアガータの12気筒にも匹敵するモンスターに仕上がっているのだ。
テストコースを走るような機会に恵まれれば、過激なスピードを出したい欲求に抗えないだろうが、そんな時にもDB9は盤石で、安定して、安心できる穏やかさがある。この世の果てまで走っていけそうなフィールで、後席の乗員もまた冷や汗をかくようなことはない。
そしてもし、まるでワープするような速度に達している時に、前を走るのろまなデーウあたりのドライバーがバックミラーを見ていなかったとしても、1710kgもの巨体は、思わず拳を握りしめる間に急停止できる。巨大なベンチレーテッドディスクがスピードを奪う力は、警官が免許証を奪い去るのと同じくらい逆らいようがなく、295km/hのリミッターぎりぎりまで飛ばしてみようという気にもなろうというものだ。
先代のようなスプリングのジェントルさやリラックスした足取りはなく、ロードノイズも大きいが、大陸横断GTといったような走りっぷりは実にみごと。これをベースに製作されたDBR9がル・マンで2年連続クラス優勝を飾ったのもうなずける。