ロータスの救世主 初代エリーゼ 「1km走れば恋に落ちる」前編
公開 : 2018.05.06 16:10
ドア付き・ミドシップ
ドアレスのロードスターとして開発を始めたエリーゼは、当初 “ステップインカー” と名付けられた。ロータスの基本思想に回帰するために、車重をわずか575kgに留め、スポーツカーの熱狂的愛好家に的を絞る少量生産を想定したのである。ロータスグループの新オーナーであるブガッティ・インダストリーズは、これがエンジニアリング部門の看板モデルになることを期待していた。
プロジェクトマネージャーのトニー・シュートが指揮する開発は、コンセプトを急速に進化させていった。ドアの採用が重量増を招いたものの、実用性は向上(デザイナーのジュリアン・トムソンは「初期の完成イラストを見て不安になっていたディーラーはホッとした」と回想している)。一方、フロントエンジンで後輪駆動という初期の構想に代えてミドシップが採用される。このレイアウトには、ハンドリング性能とエキゾチックなスタイリングに加え、最小限の変更で大衆車用FFパワートレインを流用できる利点があった。
BMWが1994年にローバーを買収すると、ロータスがプロジェクトを単独で完結できる見通しは暗くなった。しかしローバーは、引き続き1796cc Kシリーズを提供。このパワーウエイトレシオに優れるエンジン(120ps、変速機を含め130kg)は、幸運なことにミドシップのMGFに合わせて仕様変更されていたし、予算も希望の範囲だった。エンジンの選択がそれほど冒険的ではない反面、ボディの構造は斬新な道を歩むことになる。