レアかウェルダンか シビック・タイプR vs セアト・レオン・クプラR
公開 : 2018.05.19 10:10 更新 : 2018.07.06 12:03
クプラRに足りないもの タイプRの一体感
しかし、いくつかの基本的な部分と、さらに細かな点については不満がある。シートは奇妙なほど高く座らせるタイプであり、そのホールド性に対して、シートバックもフラットに過ぎる。
マニュアルギアボックスのストロークは程よくショートだが、その操作感は軽すぎ、アクセルとクラッチとの位置関係が素晴らしいブレーキペダルも、サーボアシストの感触が強すぎる。
さらに、チューニングを受けたアダプティブダンパーをもつシャシーは、最後のところでドライバーの操作に対応する柔軟性が欠けている。
しかし、最大の問題は、驚くほどのペースで走っていても、今回写真撮影を行ったようなウェットコンディションでさえ、ホットハッチ好きが望むような調整能力が悲しいことに備わっていないことだ。
つまり、英国の路上における全般的な評価は、独特の個性を持つモデルではあるが、最終的にこのクルマが見せてくれるのは見せかけのパンチに過ぎないということだろう。
一方、シビックは強烈な一撃で混乱させ、即座に「フィーリング」の意味を書き換えさせる。スカーレット(=緋色)のシートは見た目が素晴らしいだけでなく、上半身をしっかりと固定する一方で、ドライバーの下半身を低く受け止め、このクルマのライバルたちでは得られないほどの、シャシーと一体化したような感覚を味わわせてくれる。
走り出せば、ステアリングとクラッチ、そしてスロットルが返してくる素晴らしい重みに気付く。エンジンのレスポンスはセアトほどシャープではないし、ツインスクロールターボをもたないこのクルマの321ps、2.0ℓ4気筒エンジンは低回転を得意とはしていないが、ショートストローク型のVTECをレッドゾーン近くまで回せば、覚悟が必要なほどの勢いで7000rpmのレッドラインへと一気に上り詰める。そして、このホンダは、セアトほど大人の体格をもつパッセンジャーに対して厳しくもない。
1速から2速へのギアチェンジとそのダンピングは、セアトをタイプRの前に跪かせる。ホンダが20年にもわたって磨き上げて来たそのシフトクオリティーは、短く、タイトなもので、完成の域に達している。且つては堅すぎると非難されたリアサスペンションには、新たにマルチリンクが採用され、少なくともこの時点では、より洗練されたフィールを感じさせてくれる。
シビックのフロントは氷結した海を進む砕氷船の如き落ち着きでエイペックスを捉えるが、こうしたコンディションであれば、レオンの扱い易い電子式LSDにくらべ、よりその動きを意識することで、シビックの機械式LSDであれば、さらに素晴らしい効果を発揮させることができるはずだ。
低μ路では、予測が難しくはなるが、ロックアップが速くなり、フロントをさらに押し出すことで驚くような効果をみせる。つまり、オーバーステアを好むそのステアリングと相まって、このホンダにはリスクを犯すだけの価値があるということだ。