ロードテスト アルピーヌA110 ★★★★★★★★★★
公開 : 2018.06.02 10:10 更新 : 2021.05.13 12:00
意匠と技術 ★★★★★★★★★★
新しいA110のスタイリングは、明らかにモダン・レトロなデザインを採用している。この非常に流麗なスタイリングは、1969年のモデルとのアピアランス的なつながりを持たせていることに疑う余地はない。しかし、フィアット124スパイダーのように、1960年から1970年にかけてのクラシックモデルをオマージュし、中途半端に仕上げられたモデルとは異なる。
この美しいボディに加えて、車両重量はわずか1103kg。プレミエール・エディションの場合は、追加された装備を含めて1125kgとなっている。ボディとシャシーはアルミニウム製となり、アルピーヌのエンジニアによれば、シャシー剛性と車重、製造品質の面で理想的なバランスを実現したそうだ。
一般道に最適化させる前提で白紙から設計されており、低重心に加えて、左右にボディが傾く際の中心点、ロールセンターの位置も低く抑えるように意識されている。実際、一般的なミドシップのスポーツカーよりも低いといえる。
アルピーヌの哲学によって全体の車高も抑えられ、サスペンションを硬くしたり、ワイドなタイヤに頼ることなく、ダイナミクス性能を高めている。つまり、グリップレベルやハンドリングの俊敏さを犠牲にせず、柔軟な乗り心地も提供していることになる。そして、ライバルモデルよりも漸進的な挙動と、限界領域でも情報量の豊かな運動特性を生んでいる。
サスペンションは4輪ともにダブルウイッシュボーン。この方式の採用も、このクルマの鍵となる、前述のダイナミクス性能を具現化するために採用されたと考えて良いだろう。
例えば、718型のポルシェ・ケイマンに採用されているマクファーソン・ストラットと比べて、ダブルウイッシュボーンの場合、キャンバー角のコントロールで有利となる。車体が大きくロールするようなハードなコーナリング中でも、タイヤの接地状態を一定に保てるから、スポーツカーに望まれる充分なホイールトラベル量を確保できるのだ。
そのことにより、アンチロールバーも中空タイプの軽量なものに置き換えることができ、乗り心地が犠牲にならずに済む。
そしてこのクルマの最大のポイントは、名車の名高い1969年式のモデルとは異なるエンジンレイアウト。新しいアルピーヌには、1.8ℓの直列4気筒ターボエンジンが、リアアスクルの前方に横向きで搭載されている。1969年のA110の場合、リアアスクルの後方に縦向きでマウントされていたのだ。
最高出力は6000rpmで251ps、最大トルクは2000rpmで32.5kg-mを発生。7速デュアルクラッチATを介して、リアホイールを駆動する。エンジンとギアボックスは、ルノーのサプライチェーン製となる。エンジンはオリジナルの給排気システムとECUを備え、トランスミッションはフルードが満たされた湿式クラッチで、ギア比も特製となっている。
燃料タンクの容量は45ℓ。フロント車軸上のシャシーに直接マウントされており、ミドシップレイアウトも影響して、データシート上の前後重量配分は44:56としている。ちなみにわれわれが計測した時は、43:57だった。