ロードテスト アルピーヌA110 ★★★★★★★★★★
公開 : 2018.06.02 10:10 更新 : 2021.05.13 12:00
内装 ★★★★★★★★☆☆
1960年代のオリジナルのA110の場合、2+2のGT4バージョンも存在したが、新しいモデルは、当時のベルリネッタバージョン同様に、ストイックな2シーターとなる。
乗り降りはこのクラスの標準と比較すれば楽な方で、運転席と助手席の近さは、コンパクトなスポーツカーに乗っていることを気付かさせてくれる。またコクピットのデザインも魅力的だ。
高くサイドサポートが立ち上がったスポーツ・バケットシートの背もたれは固定式。座り心地は充分快適で、長距離ドライブも苦にはならないだろう。室内の仕上げも上質で、レザーとアルカンターラに覆われ、ブルーのステッチが映える。
シート間のセンターコンソールには、エンジンのスタートボタン、トランスミッションのコントロールスイッチ、パワーウインドウと電子制御ハンドブレーキのスイッチが並ぶ。ただ、カーボンファイバーとレザーに覆われた室内の雰囲気とは裏腹に、スイッチ類などの取り付け精度はイマイチで、エンジン始動時などに小刻みに震えてしまい、せっかくの印象を悪くしてしまった。
アウディTT RSや718ケイマンと比較すると、品質は劣るといわざるを得ない。しかしクルマの目指すところはシンプルさと軽量さだから、受け入れるべきなのだろう。
また、明らかにほかのルノー車に用いられている部品が流用されているところもある。クルーズコントロールとスピードリミッターのトグルスイッチや、ステアリングコラム部分のリモート・オーディオスイッチは、ほかのデザインとの調和に欠いていると思う。
しかし、それ以外のほとんどの場所は、A110のドライブに相応しい、魅力的な雰囲気にまとめられている。例えばシフトパドルはアルミニウム製で、そのほかのルノースポール・モデルよりも、両サイドより少し上、指先を伸ばした先の自然な位置に取り付けられている。
金属製のドアハンドルやレザー張りのドアトリムなど、頻繁に触れるところは上質で、心地よく感じるだろう。
着座位置も良く、低いポジションで操作しやすいレイアウトでありながら、充分なレッグルームとヘッドルームを確保している。ヘルメットを着用していても、ヘッドライナーにこすることはなさそうだ。空間自体に余裕はないが、クルマの性格的にオーバーサイズのダブついた洋服を着て乗ることはないだろう。A110を観察するにつけ、大きな課題は見つからないと感じた。
加えて、A110には比較的充分なラゲッジススペースも確保されている。ケイマンよりも200mmも全長の短いスポーツカーでありながら、フロントとリアに、使いやすい形状の空間が取られている。アルピーヌによれば、フロント側には小さなスーツケースならふたつ積めるとしているが、かなり小さな物を指しているのだろう。週末の旅行のための荷物は、かなり効率よくパッキングする必要はありそうだけれど、このクルマならその価値は充分にあると思う。