ロードテスト アルピーヌA110 ★★★★★★★★★★
公開 : 2018.06.02 10:10 更新 : 2021.05.13 12:00
乗り味 ★★★★★★★★★★
リアエンジンはからミドシップへと変更されており、ミケロッティが手がけたオリジナルのA110とは素性が異なる。さらに、路上での振る舞いや乗り心地は、今まで慣れ親しんで来たようなクルマとの違いも感じるはず。
その理由は、新しいA110が持つリアサスペンションのほかにはない柔らかさにある。コーナーでの挙動や乗り心地、グリップ限界付近での振る舞いに大きな影響を及ぼす部分で、一般的なスポーツカーでは珍しい設定だといえる。事実、このA110は極めて特長的なダイナミクス特性を身に付けている。
綺麗にコーナリングする様は、アリエル・ノマドのよう。クルマがロールしてコーナー外側のタイヤへ荷重がかっても、スピードスケート選手のように、安定したバランスを維持する。そして、フロントタイヤだけでなく、リアタイヤでもクルマの進行方向を調整することができる。
A110のサスペンションは、フロント、リアともに、想像以上に柔らかく感じられるはず。重心高を極めて低く抑え、硬いスプリングに依存することなく、優れたグリップやハンドリングのレスポンスを実現している。
コーナリング時のダイレクトなフィーリングとナチュラルな俊敏性は、大きなケーターハム・セブンのようでありながら、低速域での路面の凹凸の処理も極めてしなやか。ダンパーの動きも非常に洗練されており、アダプティブダンパーを備えたケイマンのようでもあるが、ボディコントロールはフラットという訳でもないのが面白い。
いずれにせよ、英国の郊外の道路に柔軟に適合する、グリップの高さと落ち着いた挙動は、紛れもなく他に類を見ない。むしろここまでシンプルで実践的なドライバーズカーとなると、さらに何かもうひと癖を求めたくなってしまうのは贅沢な悩みだ。
アルピーヌが電動パワーステアリングの採用を決めるにあたっては、ライバルの動向も見ながら、様々な議論があったはず。ステアリングが軽すぎると感じる場面があり、また特に低速域で、鮮明な路面からの情報が得られていない。スピードが増すにつれて、ステアリングは重くなるのだが。
ロック・トゥ・ロックはわずか2.2回転で、アルピーヌが本来A110に持たせたかったステアリングの感触は明確。ステアリングの直径は充分に小さいもので、シャープさを得るために、パワーアシストの選択は賢明だったように思う。
ギア比が変化するバリアブル・ギアリングは少しクイック過ぎるが、このクルマのステアリングフィールは突出して良い。ステアリングの切れるスピード、重さに加えて、サスペンションのストロークに伴うトー角の変化のフィルタリングも、不満を感じることはないだろう。アルファ・ロメオ4Cのノンアシストのダイレクトなステアリングと比較しても、アルピーヌの方を選びたいとさえ感じる。