イシゴニス賞 豊田章男(トヨタ自動車CEO) AUTOCARアワード2018

公開 : 2018.05.26 11:40

豊田章男と会って

わたしが会ったトヨタの社長は、にこやかで物腰が低く、強さを内に秘めた男だった。彼は自分のオフィスがあるビルの前に立ってわたしを出迎えてくれた。これがイシゴニス賞だと聞いて、1980年代にロンドンの投資銀行で働いていた豊田がオリジナルのミニに乗っていたことを知っていた彼のスタッフは、手入れの行き届いた赤いミニクーパーを用意してくれた。これで写真はばっちりだ。写真撮影のため豊田は熱心にクルマを動かし、停車して運転席から嬉しそうに親指を立ててくれた。

われわれが時間をかなりオーバーして話し込んだ彼のオフィスは、ちょっと風変わりだった。部屋の周りはすべて記念品の類でいっぱいだ。トヨタのNASCARキャンペーンからのトロフィー、フォーミュラ1のヒーローたちからのメッセージ、このオフィスの主より少し名前の知られていないひとたちのサインが入った夥しい数の写真や風刺画。

数えきれないほどの自身の人形(亡くなった彼の師匠、成瀬弘の人形もいくつか)、それにいろいろな形や大きさのクルマの模型。棚や陳列ケースに隙間はまったくない。コーヒー・テーブルさえ、破れたレーシング・タイヤでできていることがわかった。

特製の制服を着せられたサーフボードがトロフィー・キャビネットの上に鎮座している。ハワイのトヨタ・ディーラーからの感謝のプレゼントだ。家に持って帰るのはさぞかし大変だったに違いない。

彼にとってどれが一番大切か聞くのを忘れたが、別れた後でこう考えた。目に映る物の向こう側にあるものが彼の宝なのだ。見た目だけでは決して計り知れないのだと。すべてが大切なのだ。

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