ロードテスト アストン マーティン・ヴァンテージ ★★★★★★★★★☆
公開 : 2018.06.16 10:10
アストンのベストセラー、V8ヴァンテージが新世代へ移行しました。ゲイドンのかつてない成功を支えた先代モデルより2割ほど高額な設定ですが、並み居るライバルたちを押しのけ、シェア拡大を果たしそうな傑作が誕生したようです。
もくじ
ーはじめに
ー意匠と技術
ー内装
ー走り
ー使い勝手
ー乗り味
ー購入と維持
ースペック
ー結論
はじめに
2018年の仕事始めに届いたプレスリリースは、アストン マーティンの困難な、時に財政危機にさえ直面した歴史を見続けてきたひとびとにとっては、実に嬉しい内容だった。ゲイドンのスポーツカーメーカーにとって2017年が、この10年ほどで最も多忙で、最も素晴らしい年になったというのだ。2008年以降、初めて販売台数が5000台を超え、これまでの経営陣が成しえなかった事象、すなわち利益を生む方向へ向かっているのである。毎年赤字を計上しつづけてきた年月は、ついに転換の時を迎えた。
それと同時に、アストン マーティン史に残るベストセラー、V8ヴァンテージが販売を終了し、新型ヴァンテージへ移行した。「アストン マーティンが小さな成功を収める唯一の道は、大きなモデルから手をつけることだ」という、80年代に社を率いたヴィクター・ガントレットの忌むべき皮肉が、いよいよ葬り去られる時が来るのか、その答えは、新型が出してくれるに違いない。
となれば、アストンの繁栄が現在よりも急速に進んでいくのか、気になるところだろう。このクルマが、短期的な成功だけでなく、長期的な安定ももたらすクルマになるのだろうか。そして、本当に新型ヴァンテージは、壮大にして社の命運を変えうるセカンド・センチュリー・プランの礎になれるだけの出来栄えなのか。
今後もアストンのエントリーモデルでありつづけるだろうヴァンテージは、おそらくそんな野心を持って象られたクルマと思えるだろう。V8エンジンは慣れ親しんだ自然吸気から、提携先のメルセデス-AMGから供給されるパワフルでトルク感満点のターボユニットへ姿を変え、それは新設計のアルミ接着プラットフォームに搭載される。機械面のスペックは、過去のいかなるヴァンテージよりも目的に沿って決められたものだ。その目的はただ、世界のスーパースポーツカー市場で、これまで以上のシェアを掴むこと。それも、英国での販売価格で見れば、20%もの値上がりをしていながらである。果たしてそれを叶えられるクルマなのか、見極めてみたい。