ロードテスト アストン マーティン・ヴァンテージ ★★★★★★★★★☆

公開 : 2018.06.16 10:10

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★★★☆

ブリティッシュ・スポーツの象徴ともいうべきアストン マーティンがドイツ製エンジンを積むなんて、と非難するのは早計だ。彼らが20年近く使い続けてきたV12ユニットは、ドイツのケルンで製造されている。しかし、メルセデス-AMGのV8が、ヴァンテージアウディR8ポルシェ911ターボ、マクラーレン540Cなどの太刀打ちしうるモデルとしうるだけの芳醇さや個性、そして力強さを備えているかは、確かめなければならない。

ヴァンテージのライバルの中でも最も速い部類のモデルは、最新のスーパーカーと呼ぶに恥じない加速性能を備える。ゼロ加速で97km/hは3.5秒以下、161km/hには7秒程度で到達し、ゼロヨン11秒少々というものもある。新型ヴァンテージは、先代よりもこうした水準に近づいたが、ドライコンディションでのテストでは、クラス最速レベルのライバルに小さからぬ差をつけられてしまった。それはドラマ性や日常遣いでの扱いやすさといった点で、競合モデルより優れることの代償だ。

だからといって、このクルマがとんでもなく速いと感じられなかった、と言っているわけではない。V8ターボのトルクは、このクルマの重さを容易に背負えるもので、先代のV8ヴァンテージでは成し得なかった、即座に引き出せて扱いやすい速さを実現する。4速での48-113km/h加速は5秒以下で、この領域では2015年にテストしたメルセデス-AMG GT Sや2013年のポルシェ911ターボS、現行のアウディR8 V10プラスすら凌ぐ。

エンジン音は大きいが、あらゆる面で耳に麗しいサウンドだ。とりわけ高回転では素晴らしく、中回転域ではオペラを思わせ、低速域ではソウルフルで興味深い。モダンなスポーティGTには、ほぼピッタリだ。

ギアボックスは、スムースさと反応の良さが調和し、日常遣いのスポーツカーに最適。Dレンジでは、予想が裏切られることは稀で、インプットに沿った動作を見せてくれる。それは、サーキットでの全開走行でも変わらない。いっぽうブレーキは強力で、耐フェード性にも優れ、ペダルはよく調整され唐突に利くようなこともない。

テストコース

このヴァンテージには、パワートレインとサスペンションにスポーツ/スポーツ+/トラックの3モードが設定される。サーキットではスポーツ+とトラックを切り替えながら走ると楽しめるはずだ。さらにスタビリティコントロールは、トラックDSCとオフが選択できる。

トラックモードでは、先代モデルから大きく向上したダイナミクスを味わうことができる。よりスポーティさを高めたアストンといえば、これまでは派手にスモークを上げ大きなスライドに耽るものと相場が決まっていて、新型ヴァンテージがみせるような一級品のグリップと正確なハンドリングは備えていなかった。意図した通りにスピードを上げられる能力についても同様だ。ターンイン時に披露する、リアアクスルの確かなスタビリティは、息を呑むほど素晴らしい。

スポーツ+モードを選ぶと、派手なコーナリングも思いのまま。それでも、スロットルを残してターンインしてもすぐさまオーバーステアへ転じることはなく、パワーオーバーステアに持ち込むと、大きなドリフトアングルが楽しめる。

ドライサーキット

1分11秒4

メルセデス-AMG GT S(2015年):1分11秒9

トラックモードなら、T3やT7の脱出でハードに加速しても安定している。

ヘアピンのブレーキングエリアに届く頃には、かなりのスピードが出ている。

ウェットサーキット

1分11秒0

メルセデス-AMG GT S(2015年):1分21秒9

濡れてはいてもグリップの高い路面なら、タイヤはガッチリと掴んでくれる。

ステアリングもシャシーも、ウェット路面でのグリップ限界を伝えてくれる。

発進加速


テストトラック条件:乾燥路面/気温14℃
0-402m発進加速:12.1秒(到達速度:193.9km/h)
0-1000m発進加速:21.8秒(到達速度:248.5km/h)


メルセデス-AMG GT S(2015年)
テストトラック条件:乾燥路面/気温22℃
0-402m発進加速:11.7秒(到達速度:199.2km/h)
0-1000m発進加速:21.1秒(到達速度:253.5km/h)

制動距離


テスト条件:乾燥路面/気温14℃
97-0km/h制動時間:2.73秒


メルセデス-AMG GT S
テスト条件:乾燥路面/気温22℃

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