ロードテスト アストン マーティン・ヴァンテージ ★★★★★★★★★☆
公開 : 2018.06.16 10:10
乗り味 ★★★★★★★★★☆
アストン マーティンが新型ヴァンテージの全幅を拡げ、スタイリッシュでよりスポーツカーらしいスタイリングに仕上げたという決断は、路上の占有面積を拡大することにもつながるが、走る気にもさせてくれる。気づくのは、英国の典型的なB級道路で、白線を超えないように走らせるにはボリュームがありすぎるということと、サスペンションが扱うには重すぎるということだ。しかしありがたいことに、ステアリングは精確で予期しやすく、手応えもフィールも十分で、クルマをラインを外さず走らせるのに必要な条件を満たしている。
これまでのアストン マーティンに比べればスプリングが硬いものの、それでも素晴らしく、ソウルフルで、長距離を運転しても疲れや飽きを感じさせないツアラーに仕上がっている。概して、リアアクスルの横剛性によって、先代とはかけ離れた運動性を実現する。舗装が悪いと、いささかソワソワして上下動が発生するが、この上ないハンドリングの精確さやアジリティに見合ったレスポンスを備え、敏捷性では最も優れた部類のライバルに肩を並べる。
荒れた道では車重が災いして、大きめの凹凸で進路をぶれさせるが、ボディの上下動を緊密にコントロールするサスペンションの性能が輝きを見せる。それをとくに感じられるのは、スカイフックダンパーをスポーツ+モードにしたときだ。そのフラットな走りやコーナリング時の反応性、前輪の軌跡を後輪が素早く綺麗になぞる能力などに、重量オーバーを示唆する兆しは極めて少ない。
とはいえ、サーキットで飛ばしたり、公道上でも強気に攻めたりしたい気分になれば、その領域を超えることもあるだろう。そんな時には、アクティブLSDが極めて安定した作動でハンドリングを補佐してくれる。もしもT字路やタイトなコーナーから勢いよく飛び出しても、実に強力なトラクションのおかげで最高に楽しめるだろう。
その高いグリップレベルと安定したハンドリングゆえに、ロードカーとしてはライバルたちほど興奮を覚えないかもしれない。しかし、そのダイナミズムや楽しませてくれるキャパシティこそが、まさにこのクルマの高く評価すべきポイントなのである。