英国で毎日乗るなら540C以外の2台

この中では、マクラーレンが最も軽快でグリップ力も優れていると感じる。鋭くコーナリングをこなし、路面コンディションさえ良ければ、一番エキサイティングだと思う。

クルマに乗り込むだけで、気持ちが高まるのがわかるだろう。シートは快適だが、座面が低く奥まっていて、ポルシェやアストンよりも乗り込むのにはコツがいる。一度座ってしまえば、おしりの辺りがクルマのちょうど中心に来るような感覚があり、かつてのマクラーレンF1のようにセンターポジションの必要性は感じられない。

操作系の配置も理想的で、ステアリングホイールは垂直に近い角度で、ドライバーの手前側に位置しているから、まるでレースカーのプロトタイプがそのまま実車になったかのようだ。そしてステアリングは重いが、魔法のように情報量は豊か。油圧式のアシストに感謝しなければ。

今回の比較テストでは、一部をドライコンディションでのサーキットで実施したが、540Cを否定する要素は見当たらなかった。突出したステアリング・レスポンス、シャシーが生む俊敏なコーナリング特性、ほぼフラットに保たれるボディコントロールなど、すべてが評価できるものだった。

しかし一般道に出ると、広く穏やかな路面状況では良いものの、狭く波打ち、所々欠けていて濡れてるような、よく出くわす路面では印象が悪化してしまう。強固に締め上げられたシャシーは、必要なサスペンションストロークが得られておらず、鋭い入力の場面では路面を掴み続けるのが難しくなってしまう。このような場面では、より柔らかな足回りを持ち、ボディ幅も狭く、一般道の荒れた路面にも適応力の高い、911やヴァンテージの方が有利だろう。

常識的な速度での一般道のドライビングが優れているだけでなく、ポルシェやアストン マーティンを選びたくなる理由はほかにもある。

540Cは非常に素晴らしいが、日常的なクルマの利用シーンが豊かになるわけではない。特に狭い一般道や立体駐車場、有料道路などでの料金所、混んだ都市部での駐車場などを考えると、わたしなら別のクルマの方を選ぶだろう。誤解しないでほしいのは、スーパーカー自体は大好きだけれど、日常的に1台だけには乗りたくない、ということだ。

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