極めて高い911GTSのハードル

こうして見ていくと、現実世界において、一般道での利用を考えた場合、911カレラGTSこそがスイートスポットだと改めて思う。そしてあらゆるスポーツカーが憧れる、すべてを持っている。しかも、何かを我慢したり、人目を引くことなく、現実的なスピードでものめり込むほどに楽しめる。クルマの操縦性は懐が深く、修正が十分可能で、自車だけでなく、周囲にも危険性を与える可能性は低い。

そして911GTSのエンジンは、ほとんど使用する場面がないであろう、非現実的で象徴のような最高出力の数字よりも、リニアリティや回転レスポンスなどの方がずっと重要だということを実感させてくれる。サスペンションは、路面の凹凸を超えた際のわずかな姿勢変化は許するものの、シャシーの余力をしっかり感じ取ることができるから、操縦性にも優れている。

また911GTSのボディサイズも一般道には適切。数十年に渡ってモデルチェンジを繰り返し、ボディは徐々に成長してはいるものの、アストン マーティンや、もちろんマクラーレンほど、全幅を憂慮する必要はない。また、気軽に荷物や家族・友人を積んで、クルマでの旅行を楽しむことができるはず。ほかの2台では、そこまでの日常性は備わっていない。

911GTSなら、駐車場や有料道路の料金所での支払いや領収書の受け取りもスムーズ。車幅がつかみやすいから、ドアを開けなくても受け取れる位置にクルマを着けれられるだろう。一方でスーパーカーの場合は幅寄せも難しいし、もし手が届かなかった場合、ドアは開けられない可能性もある。すべてのクルマがそうとは限らないけれど。

心地よい春の季節、アストン マーティン・ヴァンテージと数日過ごしてみたが、実用性や芳醇なキャラクター、ダイナミズムなどの面で、マクラーレン540Cを凌駕していることを実感した。今回の評価は、AMG製のエンジンやアグレッシブなスタイリングだけでない、複合的な仕上がりによる。ヴァンテージの詳細なレポートはロードテストをご覧いただきたい。

今回アストン マーティンが達成できなかったことは、世界で最も優れたスポーツカーの最も素晴らしいバージョン、911カレラGTSを超えるということ。ちょっと不可能にも思える。

もし各車ともにターボを搭載していなかったら？

それはそれで、お互いに一層の磨きがかけられるに違いない。

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