最高のエンジンを持つクルマたち 後編

公開 : 2018.07.01 06:10  更新 : 2019.05.04 13:03

アウディRS4(B7型)

生産:2006〜2008年 価格:1万3000〜2万7000ポンド(187〜390万円)

ほんのひと世代前がなんと良い時代だったか、そのときはわからなかった。2000年代おわりの数年間、スポーツセダン御三家はみな特徴ある音や回りかたのV8でしのぎを削っていたのだ。ターボなんぞ見むきもせず、BMW M3、メルセデスC63 AMG、そしてアウディRS4がみな自然吸気V8のパワーをほとばしらせた。もうそんな日はかえってこない。

そういう時代のスポーツセダン比較テストは、V8アンサンブルがかなでる勇壮な不協和音でそれはもう騒々しかったものだ。それにくらべて、ことごとくふたつのターボで口をおおわれてしまった後継車がそろういまどきのテストのなんと静かなこと。6気筒へのダウンサイズをよしとせず8気筒をまもったのも、メルセデスだけだ。

おおくの面で、RS4のスポーツセダンとしての出来は良いとはいえなかった。M3のピタリと決まる機動性もなければ、C63のように突出したエンジンによるカリスマ性もない。だからといって取り柄がないわけではない―むしろほかの2台をもうちょっと厳しくみたほうがいい。

つまりRS4は、ことさら自己主張してくるライバルとはちがって、より洗練された印象をあたえるのだ。クルマを完全に支配下におくといったかんじではないが、上下左右に曲がりうねる田舎道を7〜8分のペースで走らせると、四輪駆動のアウディはがぜん輝きを増す。その「クワトロ」4WDシステムがもたらすウェット路面での安定性はM3やC63など敵ではないし、高回転型4.2ℓ V8エンジンもまことに逸品だ。

RS4はいま、初期型なら1万3000ポンド(187万円)から手にはいる。M3のように、ふだんは車庫で眠らせ週末だけ引っぱりだして楽しむだけではこのクルマの真価はわからない。毎日をともにするクルマとしてなら(飲んべえではあるが)、この価格で勝てるクルマはないだろう。

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