マツダが考える内燃機関の将来
公開 : 2012.03.14 11:37 更新 : 2017.06.01 00:54
カー・メーカーの多くがEVあるいはハイブリッドカー戦略に着手しているが、マツダはガソリンとディーゼルにも生き残る道があると固く決心しているようだ。
タケリ・コンセプトは、鼓動というデザイン言語が具現化されたモデルで、最新のプロダクション・モデルの方向性を示したモデルでもある。マツダ・ヨーロッパのデザイン・チーフ、ピーター・バートウィッスルによれば、タケリのおおよそ80%は来年発表されるマツダ6サルーンに受け継がれるという。
そして、その素晴らしいデザインの下に、2015年までに燃費を30%改善するというマツダのスカイアクティブ・テクノロジーが搭載されているのだ。2007年にマツダの社長によって宣言された、ハイブリッド並の効率を達成する内燃機関が与えられている。しかし、他のメーカーがEVへシフトしているのに、ガソリンやディーゼルを貫くのだろうか。
「理由は2つある。」とマツダ・モーター・ヨーロッパの車両チームのマネージャー、ウヴェ・クラハトは言う。「第1に、われわれが内燃機関にはまた大きな可能性があると思っているからだ。というのも、まだ内燃機関が発するエネルギーの30%が浪費されているからだ。第2の理由は、2020年になってもクルマの80%以上が内燃機関を使うとわれわれは確信しているということだ。」
マツダは2015年時点で、全体の半分がハイブリッドカーで、そのうち4分の1が完全なEVとなると予測している。
スカイアクティブはファースト・ステップだ。その2015年の経済目標を達成する第一歩として、よりきれいなパワー・トレインと、軽いシャシーを持ったCX-5が生産される。もちろん、マツダは将来のために完全にEVを否定しているわけではない。来年デビューが予想されるハイブリッドのために、トヨタとライセンス取引を既にしているのだ。
クラハトは言う。
「更なる発展を目指した”ビルディング・ブロック”戦略のために、まずスカイアクティブがそのベースにある。われわれは電気関係のアプリケーションも開発するが、完全なEVが完成するまでには数回のステップが必要となるだろう。」
スカイアクティブの基本は、ストップ・スタート・システムだった。i-ストップと名づけられたそのシステムは、既にマツダ3およびマツダ5のガソリンおよびディーゼル・エンジンに採用されている。最初の圧縮1サイクルでエンジンが再スタートする初めてのシステムだ。
更に、タケリ・コンセプトは、i-エループという再生ブレーキ・システムを搭載する。それは、他のスカイアクティブ・テクノロジーと共に導入され、画期的に燃料消費率を改善する。
「タケリは、スカイアクティブ2.2リッター・ディーゼル・エンジンと、6速のオートマティック・トランスミッション、そして改善されたi-ストップとi-エループが採用したことによって1500kmの航続距離を稼ぎ出すことができる。」とクラハトは述べた。
「スカイアクティブ技術で、2008年レベルから20%の燃費改善ができた。i-ストップとi-エループで更にもう10%の改善がされ、2015年に目標であった30%の燃費改善が可能となった。われわれが、コンデンサーというアイディアを最初に考えたということに誇りを持っている。それは、エネルギーを保管する、本当に新世代の技術だ。」
タケリ・コンセプトは、106g/kmのCo2排出量を誇る。現在のマツダ6の最もクリーンなバージョンでも133g/kmという値だ。燃費もマツダ6ビジネス・ラインから5.3km/l向上した24.8km/lになった。
マツダは、トヨタとの提携によるハイブリッドや、ガソリンと水素によるハイブリッドといったEV技術の開発もするが、”ビルディング・ブロック”戦略も進歩を続けるという。
例えば、i-エループは、加速を補助するためのエネルギーを取り出すことができるようになるはすだ。
環境を考えるということは、力強いデザイン、そしてドライビング・プレジャーと共にマツダが将来のプロダクション・モデルに求める3つの要素のうちの1つだ。
「パッケージが重要だ。非常に効率的なエンジンと、コンパクトなトランスミッション、そして非常に軽いボディがこの構成要素となる。」とバートウィッスルは言う。「例え、それらクルマを勇ましくドライブしても問題ない。それでも、燃費とCo2排出量は良い数値なのだから。」
マツダのコンセプト・デザイナーは新技術をタケリに取り込まなくてはならなかった。そして、スカイアクティブGダイレクト・インジェクション・ガソリン・エンジンの寸法は、クルマの形にも影響を及ぼした。
「排気ガスのきれいで効果的な流れをつくるために、スカイアクティブ・エンジンは斜めに出されたエクゾースト・マニフォールドが特徴だ。」とバートウィッスル。
「そのために、パッセンジャー・エリアを後方にずらす必要があった。この手のサイズのクルマでは、ショート・オーバーハングの古典的なスポーツ・リムジンのスタイルを取らざるをえないことが、かえってプラスになった。」
タケリのデザインが大胆なのは、それはその下に隠されたテクノロジーによるところが大きい。マツダは、複数のソリューションが環境問題を解決するためには必要だという。それは完全に電気的なテクノロジーが市場を支配するのでもないだろうし、かといって将来の車が化石燃料だけを頼るのたとも思っていないという。マツダの2020年の市場の読みは、内燃機関と、航続距離が伸びエミッションに優れた電気的なテクノロジーとが混在すると見ている。
ハイブリッドやストップ・スタート・システム、再生生ブレーキ・システムなど、そのスカイアクティブ技術があれば、マツダはパワー・ソースとしてガソリンやディーゼルが生き残っていると考えている。内燃機関の将来は、いままさに始まったばかりなのかもしれない。