英国史上最高のドライバー、スターリング・モスの軌跡たどる マセラティとともに
公開 : 2018.07.01 12:10
グランツーリスモMCで北部へ
この中から選んだのはマセラティだった。プライベーターとして操った250Fで好結果をあげたのをきっかけに、メルセデスチームの興味をひいて一躍スターダムにのしあがることになるのだ。
その中でもわたしのチョイスはグランツーリスモMC。現代のマセラティを代表するスポーツ性と、1600kmをこえる長旅にも対応できる巡航性能を兼ね備えたすばらしい1台だ。
まあ、デビューの時点ですらクラストップの出来ではなかった上に、まる10年をすぎて古さも目立ってきたのはたしかだ。でもかつてのイタリア車ほど腹が立つわけではない。シートは快適だし、ドライビングポジションもちゃんと決まる。アップルのカープレイ対応だから、ナビゲーションやマルチメディア機能にも不足はない。
エンジン始動にキーをまわすのは古風なかんじだが、わたしは好きだ。思っていたよりもお供としてずっと好ましかったと思いつつ、北部のエイントリーをめざした。
エイントリーがイギリスGPの本拠地だったことを覚えている方もおられるかもしれないが、ここで出会ったひとのだれもそんなことは気にもとめなかった。かつてのコースは、有名なグランドナショナルがおこなわれる競馬場に取りこまれ、部分的にのこっている。だが競馬から10日もたつのに、ちょっとクルマをとめて写真を撮りたいというわれわれの申し出は、怪しい者でもみるかのような感じで、けんもほろろに断られた。
だがここは、モスが1955年のグランプリでメルセデス・ベンツW196を駆って、チームメイトのファン・マヌエル・ファンジオを鼻の差で制して初優勝を飾った由緒あるところなのだ。