英国史上最高のドライバー、スターリング・モスの軌跡たどる マセラティとともに

公開 : 2018.07.01 12:10

4WDでのF1優勝の地 オウルトン・パーク

この偉大なアルゼンチン人ドライバーがモスに地元のレースで花をもたせようとしたのかどうか―ファンジオはずっと否定していたが―、モス本人はいまも知らない。そして、1950年のF1スタート以来はじめてイギリス人ドライバーが優勝した、その瞬間をとどめる記念碑的なものがあるかを確かめたかったのだ。結局、われわれはここをそそくさと後にせざるをえなかった。

しかしながら、重い足どりで56kmほど南へ戻ってたどり着いたオウルトン・パークの受付はまるで違った。あらかじめ知らせてもいなかったのだが、われわれの目的をわかってくれて、場所の提供だけでなく案内までしてくれたのだ。

ニュルブルクリンクやモナコといった世界に名だたるサーキットで何度も栄誉に輝いたというのに、なぜこのチェシャー州のコースにきたのかと思われるかもしれないが、ほかの誰もが今まで成しえていないこと、すなわち4WD車でのF1優勝をモスがやってのけたのがここオウルトン・パークなのだ。

ファーガソン-クライマックスP99は、本質的にはレースカーの形をとった4WD試験車だった。いまも昔も新しいもの好きなモスはこの趣向に魅了され、P99に合わせたドライビングスタイルをあみ出そうと熱心だった。

1961年オウルトン・パークでのインターナショナル・ゴールド・カップは、選手権の一部には数えられないかもしれないが、ジム・クラーク、ジョン・サーティース、ジャック・ブラバムといったそうそうたる面々がならび、いささかもF1に劣るものではなかった。勝つ価値のあるレースだったのだ。

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