ポルシェ・ボクスター
公開 : 2012.03.15 14:41 更新 : 2017.05.29 19:07
■どんなクルマ?
世界で最もエキサイティングなクルマと評価したポルシェ・ボクスターSにぼうっとしている暇はない。より小さなエンジンを積んだエントリーモデルであるポルシェ・ボクスターが、ボクスターSと同じように尊敬に値するかを見極めなければならないからだ。
当初、ボクスターは1996年に204bhpという非力な水冷式2.5リッターのフラット6をシートの後ろに搭載して登場した。当時は、その非力さに大きな批判が集まったものだ。しかし、16年経って、ポルシェは3.4リッターのボクスターSのエンジンと同じ素性の、2.7リッターにダウンサイジングされた261bhpのエンジンを載せてきた。このエンジンは、ピストンの修正、バリアブル・バルブ・タイミングの調整、インテーク・システムのフローの見直しなどによって、前の2.9リッター・エンジンの6400rpmよりも300rpm高い6700rpmで10bhpほど大きいパワーを発揮する。一方、トルクは28.5kg-mと1.1kg-m減少したが、幅広いバンドで発揮されるようになっている。若干トルクが減少したことは問題ではあるが、このポルシェのオーナーは、その引き換えに向上した燃料効率を得ることとなる。
より優れた冷却システムと、オート・スタート・ストップ機能、そして知的なバッテリー・チャージにより、スタンダードのボクスターは6速マニュアルの組み合わせで燃費が10.6km/lから12.2km/lへと向上した。さらに7速PDKであれば13.0km/lまで伸びる。また、Co2排出量の低下にも目を見張るものがあり、マニュアルで29g/km、PDKであれば34g.kmも低い200g/kmを切る値となっている。
■どんな感じ?
非力なパフォーマンスのエンジンを搭載するマシンのほうが、ある程度制限された道では、満足感を与えるということも珍しくはない。その手の感傷がスタンダードなボクスターにはあるのは事実だ。ボクスターSよりも若干軽く、贅肉のない感じがするが、エンジンの咆号はほとんどボクスターSと同じフィーリグだ。淀みのない2.7リッター・エンジンは、ダイナミックな表面をひっかくような感触がある。
南フランスのスムーズな道では、横方向のグリップも高く、オプションのメカニカル・リア・ディファレンシャルによるトラクションも良い。それは、ボクスターSをも後ろに追いやってしまうほどと思わせるものがある。決して安いモデルだといっても、失望させることはない。
3.4リッター・エンジンの持つ高いアウトプットはないが、それでもフラット6は活気に溢れている。但し、4500rpm以下でのトルクが薄いのは明白で、例え穏やかなモードを選んだとしても、PDKは3速ほどキックダウンして、6700rpmのピークパワー近くの回転を保とうとする。
もしボクスターを手に入れるのであれば、スポーツ・プラス・ボタンがコンソールに追加されることとなるスポーツ・クロノ・パッケージをオプションとして選んで欲しい。それはPDKのスロットル・レスポンスを高めるだけでなく、ハンドリング特性も良くなる。そして0-100km/h加速は5.7秒から5.5秒に短縮される。スポーツ・プラス・モードは、ボタンをプッシュするだけで、エンジンとギアボックスのレスポンスをリマップしてくれるのだ。
■「買い」か?
もちろん買うべきだ。但し、パフォーマンスに重点を置くのであれば、ボクスターSを買うために追加投資をすべきだ。ポルシェの不思議な能力ではあるが、クルマが高価になるのに比例して、キチンと能力も高くなるという法則がある。
しかし、ランニング・コストもそうであるし、それ以外の面においても、スタンダードなボクスターも十二分に値打ちがある。乗り心地、上品さ、増大された外観の魅力、そして素晴らしいシャシーなど、コスト・パフォーマンスを考えれば最も素晴らしいロードスターの1台であることに間違いはない。
(ニック・カケット)
ポルシェ・ボクスター2.7 PDK
価格 | 37,587ポンド(494万円) |
最高速度 | 262m/h |
0-100km/h加速 | 5.5秒 |
燃費 | 13.0km/l |
Co2排出量 | 180g/km |
乾燥重量 | 1340kg |
エンジン | 水平対向6気筒2706cc |
最高出力 | 261bhp/6700rpm |
最大トルク | 28.5kg-m/4500rpm-6500rpm |
ギアボックス | 7速マニュアル |