ロードテスト レクサスLS ★★★★★★☆☆☆☆

公開 : 2018.07.29 10:10

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★☆☆☆☆

レクサスは、このLSが最も静かなキャビンを持つ市販車のひとつだと主張する。それを実現するのが、二重ガラスのサイドウインドウや、スピーカーを用いたアクティブノイズキャンセラー、中空リムをレゾネーターとしてタイヤ気柱共鳴音を低減してロードノイズを抑制するノイズリダクションホイールなどのアイテムだ。たしかに、113km/h巡航時の環境騒音が65dBという実測値は、大型乗用車の平均よりは静かだが、2013年にテストしたメルセデスS350ブルーテックや、2015年のBMW 730Ldは下回らなかった。主観的判断では、LSのキャビンはしっかりとノイズを遮断していると感じられた。タイヤノイズより風切り音の方が気になったほどだ。とはいえ、並外れて静かなクルマとは思えなかったのもまた事実だ。

ただし、洗練度だけが高級車の完成度を図る指標ではない。ドライバビリティはどうだろうか。ハイブリッドユニットのトルクは、V6ガソリンの36.3kg-mにモーターの30.6kg-mを上乗せしている。レスポンスに優れ、軽々と加速するフィールを期待するだろう。だが、それを存分に堪能できるとは言いがたい。

ふたつのパワーソースはLSの実測2.4tに及ぶ車両重量に打ち勝ち、スロットルペダルを床まで踏み込めば6秒以下で97km/hまで加速する。とはいえ、ややダルく、パートスロットルで反応に遅滞をみせ、苦もなく速度を上げることを拒むパワートレインは、高級車にはふさわしくないと感じさせる。

電気モーターは、市街地を走る速度域では適切にトルクを供給してくれるが、高速道路で満足できる加速を望むと、エンジンもあわせて回さざるをえなくなる。取り立ててうるさく無骨なエンジンというわけではないが、ほかの高級車に見られるような、音も無く6000rpmまで回り続けるV6ではない。

トランスミッションのマニュアルモードを使うと、LSは中速域のトルクが使いにくいのではないかという疑いを確固たるものにするだけだ。高いギアで低回転から我慢強く加速してみると、フルにロックアップすべき時にも間違いなくスリップしているのがうかがえる。

ブレーキはバイワイヤ方式で、最もスムースにクルマを止められるよう、ペダル踏力とは関係なくブレーキングフォースをアジャストする。それは十分に機能し、フィールは実にナチュラルで、容易にコントロールできるのだが、緊急時には不安を覚える。というのも、ペダルのトラベルが短く、タッチも非常にハードなのだ。制動力そのものは文句なしである。

テストコース

公道上での速度域では、LSのハンドリングはフラットでなめらか、そして比較的俊敏だが、ミルブルックのヒルコースのようなところで飛ばすと、その運動性の光るところは目立たなくなってしまう。大柄な高級サルーンとしてみれば、それは大きな欠点ではない。メルセデスSクラスアウディA8のときも同様のことが起きると思う。ただし、BMW 7シリーズジャガーXJであれば、多少はいいかもしれないが。

LSはコーナーでも十分にスピードが乗り、バランスを失わずフラットで、公道ではこの手の大柄なクルマで試みないほどハードに攻めなければ、ラインを大きく外すこともない。ハンドリングの精確さがなりを潜めても、基本的に挙動は安定しており、まずは前輪から滑り始めるが、コーナリングスピードを思い切り上げれば速いスライドをみせる。幸いにも、パワートレインはエイペックス通過時にスピードを上げたい気分にさせるものではない。

T2のようにタイトなコーナーへのターンインでは歯切れのいいハンドリングをみせるが、コーナリング後半ではアンダーステアに陥りやすい。

T4のように速度の乗る逆バンクのコーナーでは、スピードを抑えた方がよい。フロントのグリップが、唐突に不足するからだ。

発進加速


テストトラック条件:乾燥路面/気温17℃
0-402m発進加速:14.6秒(到達速度:157.6km/h)
0-1000m発進加速:26.5秒(到達速度:201.7km/h)


BMW 730Ld(2015年)
テストトラック条件:乾燥路面/気温16℃
0-402m発進加速:15.0秒(到達速度:151.8km/h)
0-1000m発進加速:27.3秒(到達速度:195.7km/h)

制動距離


テストトラック条件:乾燥路面/気温17℃
97-0km/h制動時間:2.82秒


BMW 730Ld(2015年)
テストトラック条件:乾燥路面/気温16℃

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