ルート66:忘れられたハイウェイ アキュラNSX試乗記 後編

公開 : 2018.08.05 16:10

ルート66とは似つかないA66

だがほかはどこも、ルート66とはまるで違った雰囲気だ。たしかに古物屋はないがここは英国なのだから、古いものがまったく無いわけではない。レッドカーは世界初の救命ボート、ゼトランドの発祥の地だ。ちょっと西へいくとしばしA1号線に合流して、紀元71年にローマ人がケルト人を破った場所スコッチコーナーにいたる。ダラム・カウンティの小さな町バーナード・キャッスルには、12世紀につくられ町の名前の由来となった防壁にそって、インディアンのテント小屋ホテルではなくてB&Bが点在する。

お城がないとつまらないって? お城なら本物がちゃんとある。石壁は? ペナイン山脈を横切る道のへりにもちゃんとある。A66に似つかわしいのは、革ジャンではなくパーカとトレッキングシューズだ。目にはいるのも、アメリカ中西部大草原のようなカーキ色や黄色ではなく、ただひたすら緑だ。すばらしく風光明媚なペナイン山脈北部をすぎると、美しいブロアムの古城、そしていよいよ湖水地方だ。

A66から右に左に分かれてヒツジが群がる牧草地や荒れ地を横切る道も、走りがいがある。タイプRはまさにこんな道のためにあるクルマだ。カッチリとした挙動に、恐るべきトラクション能力もさることながら、ステアリングとシフトの感覚もいまのホットハッチでは一番だ。

ただA66自体はというと、おもしろさではルート66と選ぶところはない。ただ見どころをつなぐだけの道だ。ワーキントンの町にはいると、ディベンハムズ・デパート前の信号でA66はなんの断りもなく終わりを迎えてしまう。そこで、ルート66が本来とはちがう場所に終点を変えてしまったのにならって、数kmほど南へくだったホワイトヘブンの浜辺まで足を伸ばしてみた。

まあ、たしかにアメリカ版の旅とは似ても似つかない。20回ほどくりかえしてようやく肩をならべるくらいかもしれない。おまけに英国を股にかけた旅ですらない(スコットランドを一周するノース・コースト500のほうがふさわしいかも)。それでも正真正銘のクルマの旅にはまちがいないし、1度走ればまた走りたくなることは間違いないことは保証しよう。

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