ロードテスト メルセデス・ベンツAクラス ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2018.08.19 10:10
走り ★★★★★★★☆☆☆
1.3ℓ直4ターボは、A200をそこそこのペースで走らせるが、洗練度という点ではこのクラスにはもっと優れたものがあると思わせるレベル。1.5ℓディーゼルにも同じ傾向があったことをあわせて考えれば、これは残念でならない。
前輪へのパワーデリバリーについては、おかしなところはない。加速はおおむねリニアで、ターボラグも気になるほどではない。ただし、プレミアムハッチバックに期待するようなサウンドは楽しめない。3500rpmから上に入ると、耳障りな唸りがかなり感じられるようになり、レッドラインに近づくとひどくうるさい。
また、7段DCTは必要以上に各段をホールドする傾向があるので、走行モードを問わずしばしばリミッターに当たりそうになることが避けられない。さらにうんざりするのは、低速から穏やかに加速しようとしても、トランスミッションがギアを下げたがること。スムースで抑えの利いた走りをしようとしても、予期せぬ加速が突如起きてふらつくような挙動をみせるので面食らうことがあるのだ。
少なくとも速度が上がれば、事態は改善される。加速時の透過エンジンノイズは落ち着き、巡航時の回転数では控えめで気にならないものとなる。このことは、A200を長距離ツアラーとして効果的なクルマとするのに寄与する要素だ。113km/h定速走行で約20.1km/ℓという燃費も悪くない。
少なくともいまのところ、ガソリン車のエントリーモデルであるA200だが、加速性能に不足はない。0-100km/hの公称値は8秒フラット、われわれの実測値は0-97km/hで8.7秒をマークしたが、上々の数字だ。エンジンは、5000rpm付近までは鋭く回る。
しかし、ピークパワーの発生点である5500rpmを超えると、その勢いは衰えを見せ始める。参考までに、昨年テストしたゴルフの1.5ℓガソリン車のデータと比較すると、パワーは今回のメルセデスに13psおくれを取り、トルクは同等で、0-97km/hのタイムは8.8秒だった。
7段DCTは、市街地ではややマナーを欠くところもあるが、スピードが乗っていればいい働きをする。シフトアップはスムースでシームレスだし、パドルシフトでのシフトダウンもきっちり決まる。設定メニューを掘り進んでいくと、インディヴィデュアル・プログラムの一環にマニュアル専用モードを見つけることができ、これを選べばトランスミッションがよりドライバーの意図に沿ったものとなる。
ブレーキングでは、1375kgのA200は挙動を乱さずコントロールの利いた止まり方をする。113km/hからの完全停止には50.2mを要するが、これはゴルフの47.8mにやや劣る。
テストコース
曲がりくねり、上り下りも多い舗装路である、ミルブルック・プルービンググラウンドのヒルルートでA200がみせたパフォーマンスは、最新のスタビリティコントロールがどう挙動を補正するかを示すものだ。
このシャシーに、天性のバランスや敏捷性が欠けているというわけではなく、いずれも素晴らしく発揮された。クルマにおいてそれは、持ち合わせていれば真にスポーティだといえるきわめて数少ない資質だ。しかし、ホイールスピンやヨーが発生したときの神経質さは整えられ、走りはほぼ常にクラス水準の穏やかさを感じさせる。それほど飛ばさなくても、そうした制御が介入するのだ。
トーションビームのリアサスペンションについては、横グリップの限界が近づくと手に負えなくなってくる。しかし、タイトなボディコントロールによって、その限界がきわめて高いことを確信させてもくれる。
概して、パフォーマンスのレベルは高かった。ただし、期待したほど走りに没頭できるものではなかったのもまた事実だ。
T2ヘアピンで焦げたブリヂストンは早々にアンダーステアに屈し、鳴きながらコーナリングするが、前進の勢いが衰えることはまったくなかった。
サスペンションは速度が上がっても大きく沈み込まないが、坂の頂上を越える際には過剰に浮き上がる。
小排気量ガソリンエンジンだが、適切なギアを選択すれば、一番の急勾配であるT6への上りもそれなりにハードに駆け上がる。
発進加速
テストトラック条件:乾燥路面/気温22℃
0-402m発進加速:16.8秒(到達速度:140.5km/h)
0-1000m発進加速:30.0秒(到達速度:175.9km/h)
フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5TSI Rライン(2017年)
テストトラック条件:乾燥路面/気温15℃
0-402m発進加速:16.7秒(到達速度:141.9km/h)
0-1000m発進加速:30.1秒(到達速度:175.9km/h)
制動距離
テスト条件:乾燥路面/気温22℃
97-0km/h制動時間:3.17秒
フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5TSI Rライン(2017年)
テスト条件:乾燥路面/気温15℃