マクラーレン、急成長のワケ 各部門チーフに聞く成功の秘訣 前編
公開 : 2018.08.04 11:50 更新 : 2019.05.04 13:03
共通部品の利用でコスト削減 あえての手作業
「650Sと570スパイダーのリトラクタブルルーフを見てください。両者は同じものではありませんが、かなりの部分は共通です。われわれの仕事は、このことを最大限活用してコスト削減することです。スパイダーのライフサイクルを考えると、サプライヤーが納入するルーフセットはおそらく5000個くらいでしょう。もし同じようなものを他のスパイダーモデルで使えば、それは5000個の追加になるのです。これを価格に反映させる必要がありますね」
エンジニアリングのトップにとってもうひとつの大きな問題は、開発スケジュールの調整であるとパルマ―はいう。マクラーレンの良く知られたトラック22販売計画(今後4年間で12の新モデルとその派生車種を販売)を見れば、時間的余裕はまったくない。マクラーレンでは基本的にニューモデルの開発に30カ月をかける。
カーボンのシャシーとパワートレインは既存のモデルに使われているものをベースにすることが前提だ。720Sのように新しい要素が多く含まれている場合はもう少しコストがかかるが、おなじみのLT(ロングテール)バージョンならコストは下がる。華やかな新型マクラーレン・セナの場合、開発が始まったのはたった2年前である。すでに売り切れだが。
パルマーはクルマの製造プロセスのコスト削減も監督している。ロボットでフロントガラスを取りつけるには(大規模工場では一般的だ)、必要な設備に300万ポンド(4億4000万円)かかる。1日4台の生産では大きな投資であり、マクラーレンの「有効性が第一」のフィロソフィーに合致しない。したがってウォキングではフロントガラスは人手で取りつけられている。
お分かりいただけただろうか? 細かいところがモノをいうのだ。
後編につづく