アストン マーティン・ラゴンダを24台所有する男 一体なぜ? ガレージを取材
公開 : 2018.08.11 12:10
今でも劇的で賛否あるクルマ
もっとも、駐車については慎重にならざるをえない。小さい前輪切れ角、長大なホイールベース、見切りの悪さが手伝って、取り回しは悪い。ダディングはある立体駐車場で、入口のらせん状の坂を回りきれずに立ち往生したことがあるという。そして、やむなくバックで退散したそうだ…後ろにつまった10台も道連れに。
つぎに乗った緑色のシリーズ4も、せまい所で腹立たしいくらい持てあますのはロングホイールベース版のティックフォードに負けずおとらずだったし、低中速域ではより機敏なわけでもなかった。だが組み立て品質は高く(この個体は最後から数えて4台めの生産だ)、1980年代中盤のヴォグゾール車から拝借したメーターの表示も読みやすかった。スタイルも明快で実験的な印象も薄れたが、同時に興味を引く要素が失われた感もある。
両車とも、ゆっくり走っていてもエンジンはやたらと存在を主張する。バルブ駆動系からのノイズがすごいのだ。そこで鞭をくれてやるとV8の低いうなりが押しよせ、気づくとATはゴツンという変速ショックとともにトップの3速に入っている。ちょっと荒削りではあるが、おもしろい。
間違いなく、ラゴンダは触れてみる価値のあるクルマだ。それを実践しているダディングはこう語る。「ウィリアム・タウンズにも会いました。大胆に前へ進む、独創的な物事の考え方が好きでしたね」
ライヒマンもいう。「タウンズは常々常識を変えたいと考えていました。いまだ劇的で賛否あるクルマですが、ひとびとの記憶にはのこっています。賛否両論は必ずしも悪いことではありません。はじめは冒険といわれたものも、すばらしい新世界に導いてくれたと、後でわかるのです」