ロードテスト ポルシェ911GT2 RS ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2018.08.05 06:10
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
最高出力700psのエンジンは、最新の911ターボ用を発展させたもの。この3.8ℓフラット6自体は2009年、997世代の後期型ターボで導入され、改修を重ねてきたユニットである。ほぼ10年前に登場したエンジンブロックを用い、排気量も当時と変わらないが、ポルシェのエンジニアたちはそれより40%も高いパワーを引き出した。また、3.6ℓユニットを搭載していた先代モデルと比較すれば、80psのアップということになる。
911ターボに対する変更点としては、ターボチャージャーの拡大やピストンの刷新による圧縮比低下、新型インタークーラーの採用が挙げられる。インタークーラーには、冷却用ウォータースプレーを装備。噴射用冷却水を5ℓ貯えるタンクは、ラゲッジコンパートメントの底に設置され、高温時や過酷な負荷のかかるコンディションでのピーク出力維持に寄与する。7200rpmのレッドラインは、同等のハイパフォーマンスを発揮するターボエンジン群において抜きん出た回転性能を誇る、とポルシェは謳う。しかし実際には、フェラーリが488ピスタのV8ターボを8000rpmまで回しているのに劣るし、マクラーレン720Sのそれにもおくれを取っている。ついでに言えば、それらのライバルはパワーでもトルクでも、そして車重の軽さでもGT2 RSの上を行く。
後輪駆動であるのは、GT2のフォーマット通り。だが、その駆動力を受けるトランスミッションはマニュアルではなく、歴代初のシフトパドル付きDCTとなった。また、GTのサフィックスを持つ他の現行911にならい、PTVプラスと銘打ったトルクベクタリング機構を持つ電子制御デファレンシャルや、GT3や918スパイダーに導入された四輪操舵システムも搭載する。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアがSLAマルチリンクで、前後とも限界時のホイールコントロール性能を高める補助スプリングを備える。このハードウェアは、基本的にGT3 RSからの流用だが、PASMことアダプティブダンパーのチューニングは変更。これらはゴムブッシュを廃し、ボールジョイントを介してホワイトボディにリジッドマウントされる。車高やキャンバー角/トー角は調整可能で、コイルスプリングにはレースモデルの911GT3 Rと同じ軽量素材を奢った。
重量削減策は、そのスプリング以外にも多岐に渡り、911ターボ用より7kg軽いチタンエグゾースト、鍛造アルミホイール、ポリウレタンのバンパー、カーボンFRPのボンネット/フロントフェンダー/エンジンフード、ゴリラガラスで軽量に仕上げたクオーター/リアウインドウを標準装備。さらなるダイエットを望むなら、テスト車にも装着されていたヴァイザッハ・パッケージを選択することになる。マグネシウムホイールやカーボン素材のスタビライザー、チタンのロールケージを含むそれは、30kgのウェイトをベースのGT2 RSから削り落としてくれる。