ロードテスト ポルシェ911GT2 RS ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2018.08.05 06:10
走り ★★★★★★★★☆☆
ハードコアなスーパースポーツカーにおいて、MTの採用例がいかに減ったかを考えれば、GT2 RSが3ペダルに固執することをポルシェが大きなリスクと見なしても無理はない。ましてや彼らは、通り一遍のDCTではないPDKというリソースを持ち合わせているのだから。
サーキット向けの有能なローンチコントロールを備えるのは、この手のクルマとしてはもはや当たり前で、おおかた予想がつくところだろう。しかし、最新版のGT3ともども設定されるパドル・ニュートラルは、ポルシェのPDKならではの、左右のシフトパドルを同時に引いてホールドすることでクラッチを完全に切る機能。クラッチをつなぐための操作は、押さえていたパドルをリリースするだけだ。誰よりも速いスタートが切れるばかりではなく、トラクションコントロールを切ってエンジン回転をさらに上げてのホイールスピンもドライバーが調整するよりうまくこなしてくれるが、それらはこのニュートラル選択機能により、大抵のパドルシフトを備えるスーパーカーよりマニュアルを思わせる直感的でアナログな操作フィールで行える。
ただし、このパドル・ニュートラルに十分慣れて使いこなせるようになってさえ、ローンチコントロールによって発進加速が改善されていることを忘れさせるのがGT2 RSというクルマだ。中回転域におけるパワーデリバリーは実にリニアなフィールなのだが、それでもドライ路面でさえ325セクションと極太なリアタイヤは簡単にホイールスピンし、そのまま踏み続けていたら4速に入れても空転が収まらないのである。
そこを自制し、電子制御が完璧な仕事をすれば、0-97km/hは3秒フラット、0-161km/hは6.1秒で駆け抜ける。ウラカン・ペルフォルマンテと720Sならば3秒以下で97km/hに達し、ランボの方は161km/hで6秒フラットをマークするが、いかに3000万円級のスペシャルモデルとはいえ所詮は金属シャシーのGTカーに過ぎない911から派生したクルマと、カーボンシャシーのスーパーカーたちとを加速タイム基準で比較するのはフェアではないだろう。
超ハイスペックカー・リーグにあっては速さで劣るが、車内で感じる速さは途轍もないものがある。エンジンの強烈なポテンシャルも印象的だが、プログレッシブな加速やほぼ完璧なスロットルレスポンスは、これほど負荷が大きくきわめてショートストロークなエンジンとしては素晴らしいレベルだ。一般にクランクシャフトの回転がピークトルク発生点に達すると、タイヤを唐突に増速する一定しない力の奔流が起きがちだが、このクルマにそれはない。そのため、加速の暴力的な感覚は和らげられ、思いのほか凶悪さのない精密なクルマに感じられる。少なくとも、電子制御のドライバーズエイドをオフにするまでは。
だが、路上でみせるエンジン音やサスペンションのフィーリングは、実にラフでワルっぽい。ロールケージはリアアクスルの粗さを露呈させ、跳ねた石の当たる音やブレーキの鳴きを耳のすぐそばまでダイレクトに伝えてくるようだ。また、エンジンのサウンド的な魅力は、9000rpm近くまで回るGT3の4.0ℓ自然吸気の素晴らしさには全く及ばない。もっとも、このクルマ単体でみればなかなかいい音をしているのだが、それはエキゾーストの音量を高めるモードを切った方がいい場合が多い。
テストコース
GT2 RSのボディコントロールは、GT3に比べると緊密で、やや楽さに欠ける。また、ボディの動きはより大きいので、アンダーステア傾向を示すのもやや早い。ドライバーズエイドを着れば、後輪の暴れ方もハードだ。PSMをオフにしてスロットルを大きく開けると、4速でスピードメーターが3桁の高い数字を示していても、強い横Gが掛かっている状態でパワーをかければ、リアが流れるだろう。
これらに加え、タイヤはウラカンが履いていたほぼレーススペックのピレリ・トロフェオRより常識的なミシュランPSカップ2なので、ドライサーキットでイタリア生まれのライバルが昨年叩き出したラップタイムを凌ぐには至らなかった。このコースで2.5秒のビハインドは大差といえる。残念ではあるが、比較的タイトで速度域が低く、それでいて何カ所か4速に入るコース設定を考慮すれば、それほど驚くような結果ではない。
ドライサーキット
ポルシェ911GT2 RS:1分7秒8
ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ:1分5秒3
タイヤは、T4で全開にできるほどのコンフィデンスを与えてくれるのに十分なグリップを発揮してくれなかった。
T7のようなコーナーへハードな進入をするためには、かなり強くペダルを踏み込まないとカーボンセラミックブレーキが満足に利いてくれない。
ウエットサーキット
ポルシェ911GT2 RS:1分12秒9
ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ:1分14秒9
リアエンジンレイアウトですら、水のたまった路面で700psを使おうとする場合にはものの役に立たない。
よりタイトなスタジアム・セクションでは、ステアリングとシャシーが相まって前輪のグリップ限界を完璧に伝えてくれる。
発進加速
テストトラック条件:乾燥路面/気温19℃
0-402m発進加速:10.8秒(到達速度:219.4km/h)
0-1000m発進加速:19.3秒(到達速度:280.0km/h)
ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ(2017年)
テストトラック条件:湿潤路面/気温16℃
0-402m発進加速:10.6秒(到達速度:220.0km/h)
0-1000m発進加速:19.3秒(到達速度:273.3km/h)
制動距離
テスト条件:乾燥路面/気温19℃
97-0km/h制動時間:2.55秒
ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ(2017年)
テスト条件:湿潤路面/気温16℃