ジェンソン・バトン レースの虜となった数奇な人生 インタビュー
公開 : 2018.08.12 16:10
ポイントを勝ち取ることこそ重要
ブラウンがチャンピオンを勝ちとれるマシンをつくれたタイミングだったことは(F1を撤退したホンダチームをブラウンが買収し、メルセデスの優れたエンジンと掟破りの素晴らしいシャシーの組み合わせが実現した)、バトンが運が良かっただけだという批判の声も生んだ。だがそういった批判は、彼が同じマシンを操るチームメイトよりもだんぜん速かったこと、のちのマクラーレンでもハミルトンやアロンソとがっぷり四つの争いを演じて屈しなかったという事実を見落とした話にすぎない。
そんな華々しい経歴を重ねられて幸運だったと思うかという問いには、「なにもせずに、自分のしてしまったことを弁解するだけなのはイヤなんだ」とバトンは丁寧ながら毅然と返す。とはいえ彼は自分自身をよく「フルーム生まれの田舎者」と表現するし、どれだけの才能あるドライバーが脱落していったかもよくわかっている。
それでも、その自信に揺るぎはない。「ここにくるまでに努力は重ねてきたし、同じ世代のトップドライバーにも太刀打ちできると証明してきた。ポールポジションを取るのが優れたドライバーだというひともいるけど、ぼくはそうは思わない。ひとつのマシンで並みいるチャンピオンたちと戦って勝ちとったポイントこそが大事なんだ。ほかの結果など大したことじゃないよ」
残念ながら、バトンのF1人生はマクラーレン・ホンダの後継マシンの競争力低下で先細りとなっていった。さらに、2014年の父親の死も追い打ちをかけた。8歳でカートをはじめた彼を手塩にかけて育て、キャリアを通じてレーサーとしてのバトンを形成した精神的支柱というべき存在を失ったのだ。