ロードテスト フェラーリ812スーパーファスト ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2018.08.12 10:10  更新 : 2018.08.17 14:36

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★★★★

812の12気筒エンジンは、思いつく限りあらゆる点で、完全に桁外れだ。即座に湧き上がるパワー、ペダル操作へのレスポンスとバランスの良さ、扱いやすさ、低回転域でのマナーの良さ、そして9000rpm近くまで吹け上がる間に奏でる芸術的なサウンド。これに立ち向かうべく土俵に上がれるのは、ポルシェ911GT3の4.0ℓフラット6か、ランボルギーニのV10とV12の中でも最も出来がいいものくらいだが、どれも敵いはしない。

しかし、最も心を捉えるのは、パワーデリバリーのリニアさだ。このエンジンにはフラットスポットがない。その輝きが曇ることを感じる瞬間がないのだ。もしも50km/h以下で6速に入れてフルスロットルをかましても、ラフさや燃焼のバラつきが出る心配はない。そのまま踏み続け、回転計を睨みつけていれば、スピードは規則的に上がっていく。6速での48-80km/h加速タイムは3.7秒だが、その数字だけ見てもそれほど驚くことはない。しかし、同じギアのままで209-241km/hが3.6秒だと知れば、いかにすごいことか気づくだろう。この36km/h刻みのタイムが、ほぼ全て0.4秒以内に収まるのだ。

ギアボックスは低速域でもスムースに働き、全くトラブルなく操作を受け入れる。クリープ現象はないが、取り回しは思いのまま正確に行える。ステアリングコラムにマウントされたパドルは大きく、ステアリングホイールを回しながらでも見つけやすい。シフトチェンジはポルシェ911GT2 RSやマクラーレン720Sのそれよりわずかに遅く感じるが、比べなければそうとは気づかない程度だ。

それらすべてが相まって、激しく扱われ青天井に回されるのを好むようなパワートレインが完成する。GTカーであれば有能であるべきクルージングにおいては、エンジンは静かでキャビンへの侵入ノイズはまずまず低く保たれる。タイヤがワイドなので予想できるだろうが、ロードノイズは常に大きめだ。とはいえ、長時間乗っているのがイヤになるほどではない。燃料タンク容量は92ℓ、われわれが計測したツーリング時の燃費は8.4km/ℓだから、770km程度は走れることになる。

テストコース

サーキット走行では、800psのV12をタイヤやブレーキが持て余す。しばらくの間は楽しめるかもしれないが、結果を考えずにエンジンを全開にし続ければ、最終的にはどちらも過熱し疲弊してしまうのだ。

そのパワーは、ほぼどのギアでも、いかなるコーナーでも、手に負えないオーバーステアを生む。スライドの始まりは急激だ。ただし、ステアリングはダイレクトなので、速度さえ合わせれば修正できないわけではない。

速く、しかし正確に走らせるには修練と自制が必要だが、レースモードを選択していればハンドリングのスタビリティは上々に維持される。ただし、引き換えにシステムがやや煩わしく介入するようになるのだが。

標準装着タイヤはピレリPゼロで、だいたい5周ほどでオーバーヒート気味になりだす。今年中には、サーキット用のタイヤがオプション設定される見込みだ。

ドライサーキット

フェラーリ812スーパーファスト:1分9秒3

アストン マーティンDB11 V12(2016年):1分12秒9

ほとんどの後輪駆動車では、逆バンクのT3出口でオーバーステアを出すことは珍しい。812の場合、そうなったらタイヤのグリップが失われ始めていることのサインだ。

ヘアピン手前で200km/h前後から60km/hほどまで減速するのは、このサーキットで行える最も過酷なブレーキテストだ。4〜5周でペダルのタッチは甘くなり始め、制動力が落ちてくる。

ウエットサーキット

フェラーリ812スーパーファスト:1分8秒3

アストン マーティンDB11 V12(2016年):1分12秒6

タイトコーナーでのアンダーステアは、フロントから伝わる穏やかなバイブレーションで知ることができる。

ドリフトを補助するサイドスリップ・コントロールの最新版は、十分なカウンターステアを当てられるように設定されているはずだが、長いカーブのT7ではその効果を感じ取るのが難しかった。

発進加速


テストトラック条件:乾燥路面/気温30℃
0-402m発進加速:10.9秒(到達速度:221.9km/h)
0-1000m発進加速:19.3秒(到達速度:283.6km/h)


アストンマーティンDB11 V12(2016年)
テストトラック条件:乾燥路面/気温22℃
0-402m発進加速:12.2秒(到達速度:198.1km/h)
0-1000m発進加速:21.6秒(到達速度:253.6km/h)

制動距離


テスト条件:乾燥路面/気温30℃
97-0km/h制動時間:2.58秒


アストンマーティンDB11 V12(2016年)
テスト条件:乾燥路面/気温22℃

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