ロードテスト フェラーリ812スーパーファスト ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2018.08.12 10:10 更新 : 2018.08.17 14:36
乗り味 ★★★★★★★☆☆☆
その強烈にダイレクトで、容赦なく活発なシャシーのポテンシャルを存分に引き出せる道を走れば、ドライバーに目を見開かせ、鼓動を高鳴らせ、首の毛を逆立たせるようなスリルを味わわせる812の能力に疑いなど抱こうはずもない。すでに触れたとおり、フェラーリがこの812導入にあたり自らに課したミッションは「魅惑的で、走らせ甲斐のある」これまでにないフロントエンジンGTカーをこの世界にもたらすこと。このクルマのベストな状態を試せば、そのミッションが成功していることはすぐわかる。
しかし、それなりの犠牲も要する。というのも、812は気楽に走れるはずの道でも、他にはないほど緊張を強いるのだ。ステアリングは軽く敏感で超ダイレクト、乗り心地は跳ねがちで、厳しいB級道路では底付きするのではないかと心配になるほどサスペンションストロークは短い。また、そうする気になればいつでも、あっという間にオーバーステアに転じかねない。ワイルドな乗り味、などという言葉で納得できるものではないのだ。
プライマリーライドは、F12より硬くアグレッシブに感じられる。F12でさえ、英国の不整路面には合わないと思うことがあったのだから、これは問題だ。バンピーな舗装に合わせたダンピングのモードを選んでも、右へ左へ振られ、振動し、落ち着きなく動く。スーパーGTと呼ばれるクルマであっても、順応してしかるべき道を走っていてさえだ。速度を上げた時の突き上げはサスペンションをぎこちなく感じさせるが、そうでなくても減衰不足に思え、ボディが沈み込んだ時に凹凸を越えたら床下をヒットしそうでビクビクするハメになる。
ワイドなフロントタイヤは路面の傾きに過敏で、荒れたB級道路ではバンプステアや轍に足を取られる挙動が出がちだ。スムースな舗装路面でさえ、リア外輪が路面表示に乗り上げたり、片輪のみ水たまりに踏み入れたりすると、瞬間的なオーバーステアでドライバーの集中力が試されることになる。
それらを考えると、812スーパーファストは、美しいコート・ダジュールを休日にドライブするときのファーストチョイスにはなり得ない。時としてこのクルマは、多くのミドシップ・スーパーカーでは再現できないようなスリルをもたらす。その敏捷性とハンドリングバランスは途轍もないというにはやや不足があるが、高速道路でさえステアリングがやや反抗的で落ち着かなく感じられ、長距離を走ると疲れる。スーパーGTとして、これはありがたくない。