公道対決 日産GT-R vs フォード・フォーカスRS 前編 回顧録
公開 : 2018.08.15 11:40
GT-Rの桁外れな速さ
けれど、場所がサーキットならばフォーカスはGT-Rが巻き上げる砂を甘んじて浴びるより仕方がないかもしれないが、公道は違う。そこはまったく異なる掟が支配する場所であり、ありあまるパワーがあっても、それを効率的かつ安全に活用できなければなんの役にも立たないからだ。
だから、フォーカスが予想以上にGT-Rに迫れる可能性もないわけではなく、そうなったら構成を考え直さなければならない。もっとも、約500万円のハッチバックが約1100万円のGT-Rの牙城に迫れたならそれは十分にニュースであり、少なくとも、1台ですべてをまかなえる高性能マシーン以外のクルマに金を投じる行為が賢明かどうか、疑問を投げかける記事にはなるはずである。
ところが、1級国道を外れてGT-Rの無愛想なノーズをヨークシャーの谷間に向けて進んでいくにつれ、わたしの頭の中にある疑念が浮かんできた。もしかすると、今回の企画は完全な裏目に出るのではないか。GT-Rは凶暴に見えるのは間違いないが、見るからに速そうなアピアランスではない。
スペック表に並ぶ数字にしても、パワーウエイトレシオはポルシェ911カレラSよりもほんの少し優れているだけで、トルク荷重比では同じく過給器を持つ911ターボにおよばない。だが、低速コーナーを回って長いストレートに出たとき、それは杞憂だとわかった。
そのときのGT-Rの加速たるや、免許証どころか市民権すら危うくするレベルで、要するに恐ろしく速いのだ。最速のスーパーカーが常にそうであるように、公道でGT-Rを運転するときには、それに伴う責任として、なによりも自制心を働かせることが必要不可欠となる。