公道対決 日産GT-R vs フォード・フォーカスRS 前編 回顧録
公開 : 2018.08.15 11:40
「バタータブ」とよばれる峠
その後ろをついていくフォーカスは、まるで小さいが意志の強いヨークシャーテリアのようだった。前を行くGT-Rのかかとに食いついたら離れない。GT-Rのような桁外れのパワーは望むべくもないが、ドライバーを熱くさせる身のこなし、自らが備えたポテンシャルを存分に引き出させる扱いやすさでは、まったく引けを取らない。テストは実はまだ始まっていないのだが、すでにわれわれは、今回の組み合わせが紙の上の数字ほどのミスマッチではないことを理解していた。
最終的な目的地は、「バタータブ」という奇妙な名前を持つ峠の周回路である。ここほど高性能車にとってタフなテストステージは、われわれの知る限り英国内には存在しない。バタータブの道は狭く、傾斜も舗装も信じられないほど変化に富んでおり、しかも路面は不規則に波打っている。もし操安性になにか潜在的な問題が隠れていれば、容赦なくそれを暴き出してしまう難所である。
ここで求められるのは、パワー/トルクや物理的グリップの絶対量ではなく、バランスのとれた運動能力である。バネレートには荒れた路面をスムーズに抜けられるだけの柔軟性が要求される一方で、ダンパーはボディの動きが走行上の障害となる手前でそれを食い止められる鋼のごとくしなやかな制御力を持っていなければならない。
この地獄のような舗装路をどう走ろうとも、フロントノーズはステアリングホイールの操作に追従し、テールエンドはそれに付き従うように、常に安定した姿勢を保ち続けなければならないのだ。