ミドシップスポーツカー対決 エヴォーラ vs ケイマンS 回顧録
公開 : 2018.08.13 11:10 更新 : 2018.08.14 19:47
リアシートを持つエヴォーラ
ケイマンSはエヴォーラがターンインしたポイントで完全にアンダーステアに陥り、後輪がバンプを踏むと同時にあっさりとグリップを失ってしまったのだ。この瞬間、ロータス・エヴォーラがどういうクルマであるのか、わたしはすべて理解したというわけである。
ロータスがエヴォーラの開発に着手したとき、ポルシェ・ケイマンはすでに確たる地位を築き上げていた。ほとんどあらゆる意味において、このクラスのほかのクルマにとにかく決定的な差をつけた存在であった。
しかしその一方で、特に英国内においては、ケイマンは決してベストセラーといえるほどの売れ行きを示していない。これだけ卓越した動力性能を持ちながら、それが販売面につながらないことを、ポルシェはいまだに不可解に思っているようだ。
しかし考えてみてほしい。ボクスターとほとんど同じシャシーを使っていながら、シート数はそのままの2座で、オープンエアを楽しめるわけでもないクルマを、いったいどんな英国人が好き好んで選ぶだろうか。
そこでロータスは、エヴォーラが商業的に成功するためには、少なくとも一対のリアシートが必要不可欠と判断したのである。その決断を下したまさにその日、エヴォーラのプロジェクトは翼を得たといっていいだろう。2シーターのケイマンSに比べ、ほぼ同程度の上方投影面積でありながら、小さいながらも一対のリアシートを車内に押し込むことに成功したのだ。