ミドシップスポーツカー対決 エヴォーラ vs ケイマンS 回顧録
公開 : 2018.08.13 11:10 更新 : 2018.08.14 19:47
官能的なポルシェのエンジン
次に、肝心の後席に乗り込んで、プラス2の座席を確認してみよう。身長が150cmを超える人は、まずまともに座るのは不可能であることが判明した。しかも、グラスエリアが皆無に等しいので、閉所恐怖症を引き起こしそうなほどタイトである。
実際には追加の荷物置き場程度に考えたほうがよさそうだが、残念ながら911ほどの使い勝手のよさは備えていない。もちろん、ケイマンSのシート後部にあるわずかなスペースよりは、間違いなく使える空間には違いないのだが。
さて、続いてエンジンを始動させてみよう。音も大きく活気に満ちていて、明らかにエキサイティングに感じられるポルシェの横に並ぶと、エヴォーラは奇妙なほどにおとなしい。トヨタ製V6は、レッドゾーンぎりぎりまできっちり回し切ったとしても、背後から左耳に入ってくるサウンドは、快調ながら抑制の効いた機械音に過ぎない。
これがケイマンSだと4000rpmから素晴らしいサウンドが響き渡り、最後の1500rpmまで実に気持ちのいい、胸躍らせる轟音が炸裂するのである。このように、エンジンに関していえば、エヴォーラはケイマンSに比べて魅力に欠けているのは拭いようのない事実だ。
エヴォーラに搭載されているトヨタ製のユニットは、エヴォーラを十分以上に速く走らせる仕事をこなしており、さらに低速から中速域でのレスポンスも素晴らしい。しかし、ポルシェに比べると味気なくて、オーラがまったく感じられない。ポルシェ製エンジンのような、エンジニアリングの粋を集めたサラブレッド的な存在ではなく、淡々と仕事をこなす農耕馬のようなエンジンといったらわかっていただけるだろうか。