現代車は個性に欠ける? 英AUTOCARが選ぶ、愛すべき個性的なクルマ9選 後編

公開 : 2018.08.19 06:10  更新 : 2021.03.05 21:43


アルファ・ロメオ164クアドリフォリオ

コリン・グッドウィン

わたしの場合、エンジンはクルマを運転する時に感じる個性の重要な要素。一番のお気に入りのスポーツカーは、ポルシェケイマンのエントリーレベルだったが、新しい4気筒エンジンで台無しにされてしまった。現代のクルマのエンジンで、気持ちを熱くしてくれるものは、正直多くはない。

環境負荷を減らす目的で、フラットなトルクカーブにこだわり、多くのエンジンの質感は似通ったものになっている。エンジニアは、マーケティング部門の人間に先導され、素晴らしいエンジンだと思わせるように、アフターファイヤーに似た、破裂するような排気音を作っている。それに、必要以上にうるさいエグゾーストノートも。

ここで、わたしが思う、素晴らしいエンジンを紹介したい。実は、いささか信頼性の低いクルマに搭載されていたのだが。

このクルマが27年前に発表された日のことを、今でも覚えている。モータージャーナリストが集まった、英国ヨークシャーのホテルでのことを。もらったプレス向け資料には、アルファ・ロメオのロゴが入ったペーパーウェイトが入っていた。

クルマはアルファ・ロメオ164クアドリフォリオ。われわれは当時、2ℓツインスパークの164を長期テスト車両として持っていた。酔っ払ったかのようにトルクステアが酷く、パワーシートは時々動かなかった一方で、エンジンの音は良かった。

164クアドリフォリオはチューニングされたアルファ・ロメオ製V6エンジンを搭載し、圧縮比はアルファ・ロメオSZ並に高められていた。SZのカムと大口径の吸気システム、高効率のエグゾーストマニフォールドを備えていた。

当時でも、旧式的なチューニングではあった。最高出力は200ps程度だったが、サウンドはとにかく素晴らしかった。クロームメッキのインテークパイプが備わり、エンジンの見た目も美しかった。

アルファ・ロメオは、トルクステアを解消するために、164クアドリフォリオの車高を20mm下げ、エンジンマウントの厚さも12mm程度に薄くした。それでも、現代のクルマと比較すれば酷いと感じるほどに、全力での加速にはコツを要したのだが、素晴らしいサウンドと、充分な力強さを備え、エキサイティングなパフォーマンスを生み出していた。それに、スタイリングも格好良かった。

今、これほどのエンジンを探すとしたら、かなり難しいだろう。まだ電動モーターといえば、パワーウィンドウとパワーシート程度だった時代。エンジン自体の信頼性は高いV6からは、今も心地いい音色を響かせてくれるに違いない。

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