内装　★★★★★★★★★☆

新型M5、その車内の雰囲気は、韋駄天ミドルサルーンにふさわしいものだ。その設えはメルセデスAMGのE63などと比べると引き締まりスッキリしたものだが、ラグジュアリーなフィールで劣るものではなく、RSのバッジを与えられたアウディのいかなるモデルよりも快適でさえある。

基本的にはもちろん5シリーズのインテリアなのだが、赤いボタンやヘッドレストに光るロゴ、オプションとなるセラミックフィニッシュのスイッチ、異素材が緊密に組み合わせられたカーボン・アルミ・トリム、シド・ミードがデザインしたかとさえ思わせるSFチックなシートなどがそこには加えられている。暗くなれば、ムードいっぱいのアンビエントライトがキャビンを囲むように光を浮かべ、その色とパターンは赤か青か、それを混ぜて紫か、といった単純なものを超えた選択が可能だ。

コスメの違いを別にすれば、Mモデルに期待されるのは完璧に近いエルゴノミクスだ。もしも現行M3に乗ったことがなければ、このM5はその点に関してこれ以上を望めないほど素晴らしいと思うだろう。リムの太いステアリングホイールの位置を思いのままに調整できるアジャスト性があり、ダッシュボードがドライバーに向けて傾けられるのはBMWの伝統通りだ。ただし、着座位置がやや高いのは気になる。まるで、この時期は特にひどく汚れる英国のB級道路を這い回るより、アウトバーンで周囲を威圧するようにかっ飛ばすために仕立てられたように感じられるが、それはもっともなことではないだろうか。そう見なすなら、ドラマティックな感触を伝えてくるシフトパドルもまた歓迎できるだろう。

そのほかの部分も、600psのクルマに望みうるものとしては最大級の使い勝手を実現する。530ℓのトランクは十分な深さがあり、リアシートは長身でも快適に過ごせる。分割可倒式シートバックが標準装備でないのは納得いかないが、はじめから付いていてしかるべきアイテムをオプションリストの目玉に据えるのは、ドイツのメーカーのお家芸ともいえるやり口だ。

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