ロードテスト BMW M5 ★★★★★★★★★☆

公開 : 2018.09.30 11:40  更新 : 2018.10.01 15:25

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★★★☆

ローンチコントロールが、当然ながら低いギアでだが、4WDであってさえ76.5kg-mのトルクを扱いかねるようなウェットコンディションにおいてさえ、M5は猛烈に速い。路面コンディション不良な中でもゼロヨン11.5秒というのは、まったく驚きと言うほかない。同じような湿潤路面でなら、メルセデスAMG GT Rさえ0.1秒凌ぐのだ。先代M5よりは1秒以上速く、完全ドライで走らせたフェラーリ488GTBには0.5秒遅れるのみである。64-128km/hの追い越し加速なら、2013年のテストでポルシェ911ターボSがマークしたのと同じタイムを叩き出す。

思い出してほしい、これが2t級のミドルセダンだということを。スーパーサルーンを求めるユーザーはもはや、4ドア実用車ベースだからという割り切りや、現実的なシチュエーションでのパフォーマンスにおける妥協を受け入れる必要がなくなったと言ってもいい。

その万能ぶりを言葉にするなら、ムキになってそれを引き出そうとしなければ、これほど強烈なパフォーマンスを秘めていることに気づかないだろう、という表現がおそらく核心を突いている。エンジンのマッピングをスポーツ+に設定すれば、エグゾーストの炸裂音が響き、スロットルペダルは激しいほどレスポンスが過敏になるが、コンフォートモードならどんな道でも520dと変わらず楽に運転できるなめらかさを堪能できるのだ。

もしも残念なポイントを探すなら、4.4ℓV8ツインターボのサウンドが、比較的押し殺したものだということ。E60世代のV10自然吸気が聞かせた咆哮と比べると見劣りしてしまうが、そうでなかったとしてもこの過給V8の音にはカリスマ性が感じられない。その要因は、スピーカーから流れる、あまりにもわざとらしい人工エンジン音だ。また、テスト車はカーボンセラミック・ブレーキを装着していたが、それが極端に利きすぎ、時にオーバーアシスト気味なことも。ただし、このブレーキの問題は、常に見られるわけではない。

もっとも、そうした短所も、パフォーマンスの魅力に影を落とすほどではない。しなやかで、レスポンスがよく、エンジンはよく回り、強力であるといったプラス面の方が上回るのだ。先へ先へとみるみる進んで行くさまには、目を見張るものがある。

テストコース

ドライブトレーンのよりアグレッシブなモードである4WDスポーツと2WDは、ドライコンディションに最適化されているように思える。アクティブデフは前者のセッティングを選択すると特に激しく作動するようで、ターンインで素晴らしく安定した挙動を生み、ニュートラルに加速できるようになる。オーバーステアが出始めても、完全にスタビリティコントロールを切る必要はない。

Mダイナミック・モードなら、魅惑的でデリケートな後輪駆動らしいハンドリングのアジャスト性を楽しめるが、決して荒っぽいものにはならない。これが2WDモードでは打って変わって、派手なドリフトも思いのままだ。

ウェットコンディションでは、たとえばアウディRS6あたりがみせるような、素晴らしく揺るぎないトラクションや安定感を発揮することはできない。とはいえ、バランスとスタビリティのブレンドは、常に完全な予測が効くわけではないが、賞賛せずにはいられないものだ。

ドライサーキット

テストトラック条件:湿潤路面/気温8℃
1分14秒5

アウディRS6アバント(2013年)
テストトラック条件:乾燥路面/気温12℃
1分12秒8

シャシーは、持てるグリップを存分に活用する。T6でみせた安定性とトラクションはすばらしいものがあった。

4WDスポーツ・モードでは、リア外輪に十分なトルクが送られ、低いギアでヘアピンを抜ける際にパワーオーバーステアへ持ち込める。

ウェットサーキット

テストトラック条件:湿潤路面/気温8℃
1分10秒6

アウディRS6アバント(2013年)
テストトラック条件:乾燥路面/気温12℃
1分13秒3

M5が履くピレリは、ウェットサーキットのハイグリップな路面では苦戦したが、ストレートの水たまりはみごとに切り裂いた。

こういったコースで最速なのは4WDモードだ。T6のように滑りやすい高速コーナーでは、最高の安定性を示す。

発進加速


テストトラック条件:湿潤路面/気温8℃
0-402m発進加速:11.5秒(到達速度:201.3km/h)
0-1000m発進加速:20.8秒(到達速度:256.0km/h)


アウディRS6アバント(2013年)
テストトラック条件:乾燥路面/気温12℃
0-402m発進加速:12.2秒(到達速度:188.6km/h)
0-1000m発進加速:22.1秒(到達速度:242.2km/h)

制動距離


テスト条件:湿潤路面/気温8℃
97-0km/h制動時間:3.08秒


アウディRS6アバント(2013年)
テスト条件:乾燥路面/気温12℃

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事